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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/10/06 15:10

経営

ケイパビリティとは?ビジネスに役立つ意味や考え方を解説

読了まで約4分

ケイパビリティとは、企業経営における強みや優位性を指すビジネス用語です。

大きな成功を収めた企業は強固なケイパビリティが確立しているという共通点があることから、ケイパビリティの概念を経営戦略に取り入れる企業が増えています。
ケイパビリティを強めることで自社の組織力を底上げすることができますが、それにはどのような方法があるのでしょうか。

本記事ではケイパビリティの基礎知識をはじめ、類似用語であるコアコンピタンスとの違いや確立方法、企業事例などをわかりやすく解説します。
記事の最後には、ケイパビリティの確立に役立つ経営者向けのサービスについても紹介しますので、経営や人事戦略の参考にしてください。

ケイパビリティ(capability)とは

ケイパビリティ(capability)とは、英語で「能力、腕、腕前、才能、素質」といった意味を持つ単語で、ビジネス用語としては経営戦略において成長の根源となる企業の強みや優位性、アピールポイントを意味します。
特に市場の競合相手に対し、明確な優位性がある「組織能力」をケイパビリティと呼びます。

1992年にジョージ・ストークス、フィリップ・エバンス、ローレンス.E.シュルマンの3人が提唱した概念であり、論文内では「バリューチェーン全体を通しての組織の遂行力」と定義されました。

つまり、製品や技術など単一プロセスの強みではなく、研究や開発から始まり製造・販売に至るまで、事業全体を通したプロセスの中で他社優位性を発揮できる部分がケイパビリティです。
また、ここでいう他社優位性とは資金や権利、設備といった「資産」に該当するものは含まれません。

ケイパビリティの具体例

ケイパビリティの具体例として、次のようなものが挙げられます。

・物流プロセスの全体最適化を行い、ロジスティクスを実現する
・フランチャイズとの結びつきを強化し、自社の販売力を高める
・作業員の意識変革を促し、自社工場の生産効率を高める

組織能力が磨き上げられているほど、ケイパビリティとしての価値が上がり、他者への競争優位性が高まります。
過酷な価格競争や相次ぐ技術革新など、市場環境の変化がスピードアップするなかで、従来の競争戦略だけでは生き残れません。

企業のケイパビリティに注目し、組織能力を高める事業戦略が必要です。
自社の保有する特許技術に依存した事業戦略と、ひとつの技術に頼らず新たな技術をさらに開発することを目指す事業戦略では、後者がケイパビリティを取り入れた事業戦略ということになります。

ケイパビリティと従来の競争戦略の違い

従来の競争戦略では、市場におけるポジショニングを重視していました。
しかしケイパビリティでは、儲かる市場ではなく、自社の強みや得意分野を持ち、それを高める戦略が大切だと考えます。

経営戦略におけるポジショニング・アプローチでは、マイケル・ポーターの「ファイブ・フォース・モデル」が知られています。

ポジショニング・アプローチとは、競争が激しくない市場を選んで競争優位を確立する、という考え方です。
ポジショニング・アプローチは、外的側面へ作用しますが、ケイパビリティでは、企業風土や人材、組織体制といった企業の内的側面に注目し、組織力の向上を目指す戦略になります。

 

コアコンピタンスとの違い

ケイパビリティとよく混同される用語の「コアコンピタンス」について解説します。

コアコンピタンスとは

コアコンピタンスとは、企業活動において中核となる強みのことをいいます。
G・ハメルとC・K・プラハラードの著書『コアコンピタンス経営』の中で論じられ、普及した概念です。

著書において、コアコンピタンスは「顧客に特定の利益を与える一連のスキルや技術」と定義され、不連続に変化するビジネス市場において強い競争力を得るためには、コアコンピタンスが全社的に認識されることが重要と言われています。

経営戦略を全社員が正しく理解することで挑戦への意欲が高まり、核となる能力が磨かれることで組織力が強化されるという主張です。

また、コアコンピタンスとなる強みは、以下の3つの条件を兼ね備えている必要があるとされています。

1.顧客に何らかの利益をもたらす自社能力
2.
競合相手に真似されにくい自社能力
3.複数の商品・市場に推進できる自社能力

コアコンピタンスについて詳しくはこちらの記事をご参照ください。
コア・コンピタンスとは

コアコンピタンスとケイパビリティの違い

ケイパビリティもコアコンピタンスも、競合他社と比較したときの強みや優勢性を指す点で似た意味を持つ言葉ですが、違いはどこにあるのでしょうか。

まず、ケイパビリティは強みの中でも、事業プロセス全体や組織全体における強みのことを指します。

一方、コアコンピタンスは事業プロセスの中でも中核となる一部の強みを指す言葉です。

例えば、市場の中で独自の販売ルートを開拓して売上を伸ばしたとすると、独自の販売ルートがコアコンピタンス、市場調査やルート開拓によって売上を向上させたプロセス全体がケイパビリティといえます。
とはいえ、コアコンピタンスとケイパビリティは相互補完的な存在でもあります。

ケイパビリティが成り立つには、その個別要素であるコアコンピタンスが必要不可欠だからです。
実際には、用語的な違いが厳密に使い分けられていることは少なく、ほぼ同義の言葉として使用されることも少なくありません。

 

ケイパビリティが注目された背景

 


 

IT技術の急速な発展や市場のグローバル化により、ビジネス市場を取り巻く環境が急激に変化する現代は、予測不能な変化が訪れる「VUCA(ブーカ)」の時代といわれています。

実際に、リーマンショックやコロナ禍など未曽有の事態の発生により、市場は大きく変動してきました。
このような状況では、企業が安定的・長期的な成長を維持するのは容易ではありません。

価格設定や汎用的な技術力といった外的要因に左右されやすい価値だけでは、予測不能な時代に対応することは困難です。
単一的な対策ではなく、ビジネスプロセスそのものの競争力を強化することが求められます。

そのため、経営におけるケイパビリティの重要性に注目が集まっているのです。

 

ケイパビリティの活用メリット

経営においてケイパビリティの概念を取り入れるメリットを紹介します。

ケイパビリティの活用のメリットは主に以下3点です。

・差別化が図りやすい
・持続性がある
・組織横断で取り組める

差別化が図りやすい

ケイパビリティは、製品開発や販売ルート開拓といった部分的な強みではなく、事業プロセスそのものの独自性を指すものです。

そのため、経営戦略や企業のあり方によってそれぞれのケイパビリティが存在し、容易に他社に真似できるものではありません。
一度確立してしまえば、優位性の根源となる経営の核として長期的に活用することができます。

持続性がある

上記の通り、確立されたケイパビリティには持続性があり、簡単に失われるものではありません。
事業プロセスや経営基盤といった組織力に基づいているため、外的要因に左右されづらいのです。

そのため、企業活動の骨格として活用でき、安定的な経営を目指すことができます。

組織横断で取り組める

ケイパビリティの向上には全社的な取り組みが必要になるため、部署を横断した連携の強化や効果的な人材配置など、組織体制の見直しが必要になります。
各部署の連携を強めて組織力を強化することは、企業成長の原動力を強めることにつながります。

市場の変動によってケイパビリティの優位性が揺らぐことがあっても、組織力は外的要因に関係なく経営の基盤となってくれるでしょう。

 

ケイパビリティの具体例

ケイパビリティの活用事例として、3社ご紹介します。

ホンダ

ホンダはオートバイ事業でアメリカ進出を果たし、一大ブームを巻き起こして成功を収めた企業です。
その背景には、ホンダの優れたケイパビリティがあったといわれています。

ホンダは、ディーラーに自社のオートバイをただ卸すのではなく、店舗レイアウトや販売方法、サービス管理に至るまで、細やかな販売研修を設けました。
もともと高度なエンジン技術というコア・コンピタンスを持っていましたが、製品製造だけに注力するのではなく、出荷から販売まで製品プロセス全体に投資したのです。

プロセス全体の優位性を高めるケイパビリティ戦略をとったことで大きく売上を伸ばし、強固な優位性の確立に成功しました。

フリトレー

アメリカ最大の菓子メーカー、フリトレーでは、自社製品を販売する小売店舗への独自の流通方法の構築が競争優位になると考え、自社でトラックに投資し、製品を直接店舗に配送するシステムを構築しました。(ダイレクト・ストアデリバリー・ケイパビリティ)

最大のメリットは、小売り店舗内の自社の販売スペースの売れ行きを、自らの目で確認できることで、消費者の好みや需要の変化をダイレクトに察知し、その変化にほぼ1日おきに対応できるようになったことです。

配送ルートやトラックのネットワークなど、高度なテクノロジーをベースとしたプロセスの構築、トラックドライバーの教育ができているからこそ成功した事例です。

アップル

アメリカのアップル社は、主力製品を販売する際、コストや時間をかけてでも、あえて直営店を各地に展開する戦略を選びました。
販売プロセスを自社が管理することで、アップル特有の「革新的な機能」をお客様にお伝えすることが出来る、という強みを生み出すことに成功しました。

また、自社にリソースを抱えると、ダイナミック・ケイパビリティ戦略の要領で変化に応じた資源の再配分や再構築も比較的実施しやすくなりました。

 

ケイパビリティを確認する方法

自社のケイパビリティを確認する分析方法はバリューチェーンを洗い出す方法とSWOT分析を活用する2つの方法があります。
この章ではそれぞれの分析方法を解説します。

バリューチェーンを洗い出す

バリューチェーン分析とは、事業の流れを洗い出し、各行程の付加価値を見つけ出す分析方法です。
サービスが顧客のもとに届くまでの一連の企業活動を価値の連鎖(チェーン)として捉え、競合他社と比較してどの部分に強み・弱みがあるのかを分析します。

例えば、製品の企画・開発、製造、物流、広報活動など事業にかかわる機能ごとに項目を分け、それぞれの強みや付加価値、弱みや課題などを書き出していきます。
事業活動以外にも、人事、労務管理、人材開発、組織管理など、支援活動における強み・弱みを書き出してみてもよいでしょう。

バリューチェーンを全て書き出すと、強みの中でも特に独自性がある強みや、他社と比べても圧倒的に優位性があるのはどの部分なのか気付くことができます。

SWOT分析を活用する

SWOT分析とは、よくマーケティングで活用される有名なフレームワークです。
保有資産やブランド力、製品の品質、価格といった内部環境と、市場変動や競合、法律といった外部環境についてプラス面・マイナス面をそれぞれ分析することで、事業の強み・弱みを把握することができます。

書き出した強みは、他社と比較して相対評価することが大切です。
競合の製品や販売手法と比較することで、自社の強みと思っていたものが、それほど高い優位性を持っていないことに気付けるかもしれません。
このように他社と比較することで初めて、正確なケイパビリティの把握ができます。

これらの分析で理想と現実のギャップに気が付いたら、事業戦略の軌道修正が必要です。

理想のケイパビリティを得るためにはどうしたらよいのか、PDCAを回して常に試行と改善を繰り返すことが優位性の確立につながります。

SWOT分析の詳細はこちらの記事をご参照ください。
SWOT分析とは?分析例・意味や方法・活用目的などを紹介

人材育成を強化する

人材育成を強化することも、ケイパビリティを高めるために大切です。

従業員の能力や可能性を高めるためにも、利益活動に直接つながる内容だけではなく、幅広い知識を得るための学習を取り入れるのも効果的です。
従業員の視野を広げておくことで、 新しい発想での商品・サービス開発や、マーケティング活動にも役立ち、組織力向上も目指せます。

 

環境変化に適応する「ダイナミック・ケイパビリティ」の3つの要素

ケイパビリティの中でも最近注目を集めているのが「ダイナミック・ケイパビリティ」です。
ダイナミック・ケイパビリティは「企業変革力」を意味し、ビジネスにおける環境が激しく変化する中で、企業が競争力を維持するための方法論として提唱されました。

2015年に発表された慶應義塾大学の菊澤研宗教授の論文によれば、ダイナミック・ケイパビリティは次の3つの要素に分かれるとされています。

1 センシング(感知) 環境変化に伴う脅威を感じ取る能力
2 サイジング(捕捉) 環境変化を機会と捉え、既存の資源・業務・知識を応用して再利用する能力
3 トランスフォーミング(変革) 新しい競争優位を確立するために、組織内外の既存の資源や組織を体系的に再編成し、変革する能力

従来のケイパビリティを伸ばしつつ、ダイナミック・ケイパビリティも向上させていく姿勢が重要になっていきます。

ダイナミックケイパビリティについて詳しくはこちらの記事をご参照ください。
ダイナミックケイパビリティとは何か?企業が注目する理由や必要な要素など詳しく解説

 

経営戦略の見直しは武蔵野へ

ケイパビリティとは、製品力や技術力といった部分的な強みであるコアコンピタンスとは異なり企業の組織的な力や根源的な競争力を指す言葉で、企業成長には欠かせない重要な能力です。
そのため、ケイパビリティは一朝一夕で強化できるものではありません。

自社の強みを把握して、全社を巻き込んだ組織づくりを行い、長期的に取り組むことになります。
また、事業戦略や経営戦略の見直しもケイパビリティの構築に繋がります。

ケイパビリティを強化するには、正しい戦略設計によって組織力そのものを強化する必要があります。
自社の“あるべき姿”をしっかり把握できるかどうかが第一歩です。

経営戦略の見直しを考えている方は、プロのコンサルティングサービスを頼ることもおすすめです。

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