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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/04/14 09:57

経営

資金繰り

利益剰余金とは?用語の意味・内部留保との違いや内訳を解説

読了まで約3分

企業の経営状況を分析する上で、重要なキーワードとなるのが「利益余剰金」です。
企業の経営や経理を理解する際に必ずといっていいほど見聞きする言葉ですが、正しく意味を理解していない方も多いのではないでしょうか。
利益剰余金は、他社の経営状況を分析するだけでなく、自社の経営改善を進める際にも知っておくべき指標です。

この記事では、利益剰余金という言葉の定義にはじまり、類語との違いや構成要素、指標としての考え方などを解説します。

 

利益剰余金とは

利益剰余金とは、会社が長年の利益を積み立てたお金のことで、会社法で定義される剰余金のひとつです。
純資産である株式資本を構成する要素であり、資本金、資本余剰金、自己株式を除いた部分が利益剰余金となります。

貸借対照表では、株式資本の一部として「純資産」の部に仕訳されています。
具体的な内訳としては、利益準備金や任意積立金、繰越利益剰余金、分配済利益剰余金といった項目があります。

利益剰余金が増えれば会社の純資産額が増加するため、一般的には利益剰余金が多い会社ほど、経営の安定性が高いと判断されます。
一方、赤字が続けば利益剰余金も減っていきますので、マイナスとして計上されることもあります。

内部留保との違い

「内部留保」は、実は正確な会計用語ではなく、明確な定義のない言葉です。
狭義では「企業活動における利益のうち、配当に回されない部分」を指します。
つまり、内部留保の定義は利益剰余金とほぼ同じであり、一般的にはほとんど同義の言葉として使われています。

ただし、内部留保は「企業が従業員や株主に還元せず、むやみに貯め込んでいるお金」というネガティブな表現として使われがちです。
マスメディアが「日本企業は内部留保が多い」と報道するときには、このニュアンスを含んでいるといっていいでしょう。

一方で、コロナ禍によって経営に打撃を受けた企業の中には、潤沢な内部留保によって危機を乗り越えたケースが多くあります。
そのため、経営状況を量る重要な指標として、改めて注目が集まっています。

資本剰余金との違い

純資産である株式資本は、資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己資本の4つに分けられます。

資本剰余金とは、資本取引によって発生する剰余金のことです。
会社設立などの際に出資者から集めた資本金のうち、資本金として使われなかった部分などが該当します。
具体的には、払込剰余金、贈与剰余金、評価替剰余金などがあります。

つまり、資本剰余金と利益剰余金は、どちらも純資産の一部ですが、発生源が違う点がポイントです。
一般的には、企業の株式価値を高める上では、資本剰余金より利益剰余金が大きい方が望ましいといわれています。
株式公開や増資によって資本を増やした会社と、企業活動により利益を長年蓄積して資本を増やした会社では、株式資本の金額が同じでも後者の方が評価が高いためです。

 

利益剰余金が示す会社の安定性とは

利益剰余金が多いほど純資産も多くなりますので、経営状態は安定していると判断されます。
自己資産を増やす方法は、資本金の増額か利益剰余金の積み上げのどちらかですが、資本金の増額を増額しても本業の収益力とは関係ありません。

利益剰余金は経営が順調であるからこそ増えるものですので、利益剰余金は経営の安定性を量る指標として活用できるのです。

反対に、経営が厳しいほど利益剰余金は減少しますので、利益剰余金が少ない企業は業績が悪化していると判断されます。
「積み上げた利益剰余金を切り崩しながら経営している状態=赤字経営」になっていると予想されるためです。

一方で、利益剰余金が潤沢であるからといって、絶対に「経営が順調である」ともいえません。
例えば、利益のほとんどを株式投資に回しており、株価が取得額を下回っていて実際には損失を抱えているケースもあるからです。
また、大企業ほど利益を設備投資や店舗新設に回す場合が多く、余剰金が小さくなる傾向があります。

「利益剰余金が多い=内部にたくさんのお金を抱えている」というわけではなく、経営の実態を見極めることが大切です。

 

利益剰余金の内訳

利益剰余金は「利益準備金」と「その他利益準備金」の2つに分けられます。
「その他利益準備金」は、利益剰余金のうち利益準備金を除いた部分を指し、さらに「任意積立金」「繰越利益剰余金」に分けられます。

  • 利益準備金
  • その他利益準備金
    • 任意積立金
    • 繰越利益剰余金

通常の貸借対照表においては、利益準備金・任意積立金・繰越利益剰余金の3つが利益剰余金を構成する勘定科目として記載されます。

それでは、それぞれについて詳しく解説します。

利益準備金

利益準備金は、会社法で積み立てることが義務付けられている法定準備金のひとつです。

企業は、企業活動によって得た利益の一部を配当金として株主に還元できますが、株主を優遇して利益が出た分だけで配当に回していては、利益剰余金が減少してしまいます。
利益剰余金の減少は財政基盤の弱体化につながり、金融機関などの債権者に不利益をもたらす可能性も否定できません。

そのため、会社法では配当金額の10分の1以上を利益準備金または資本準備金として積み立てるよう義務付けています。
また、限度額は資本準備金と合わせた法定準備金が資本金の4分の1に達するまでとされており、それ以上の積み立ては不要です。

任意積立金

任意積立金は「その他利益剰余金」のひとつで、定款や株主総会の決議などにもとづいて、会社が独自の判断で積み立てる積立金です。

種類としては、特定の目的を持って積み立てる「目的積立金」と、目的を持たない「無目的積立金」の2つに分けられます。
目的積立金としては、修繕積立金や退職給付積立金、新築積立金、設備拡張積立金、配当積立金などがあります。
無目的積立金には、利用する目的を限定しない「別途積立金」があり、別途積立金を切り崩す際は株主総会や取締役会の決議が必要です。

繰越利益剰余金

繰越利益剰余金は「その他利益剰余金」のうち、任意積立金以外の部分です。
過年度からの使途が特定されていない累積利益に、当期の損益を加算した金額で表されます。
旧法時代には「未処分利益」や「繰越利益」と呼ばれていましたが、2006年の会社法施行により「繰越利益剰余金」との名称で呼ばれることになりました。

繰越利益剰余金は、株主への配当金の原資となる部分です。
株主は基本的にできるだけ多くの配当を要求するものですが、配当が多くなるほど繰越利益剰余金が減ってしまいますので、企業の財務基盤に影響を及ぼさない程度に抑えなければなりません。

また、繰越利益剰余金を切り崩す際には、株主総会や取締役会の決議が求められます。

 

利益剰余金がマイナスな状態とは

経営状況が悪化しており、利益が減少していれば利益剰余金がマイナスになることもあります。
利益が少ない分、これまで積み立てた利益剰余金を切り崩して経営しているためです。
利益剰余金がマイナスである状態が長く続けば、倒産や債務超過に陥る可能性も考えられます。

ここでは、利益剰余金がマイナスになる原因を詳しく解説します。

赤字経営になっている

利益余剰金がマイナスな状態とは、経営が赤字になっていることが考えられます。
利益剰余金を切り崩して経営の赤字を補っているため、その状態が長く続ければ、いつかは利益剰余金がマイナスになってしまいます。

経営資源が足りない状態ですので、いずれは借金を抱えることとなり、倒産や債務超過のリスクが高まります。
債務超過とは、会社の負債額が資産の金額を上回っている状態です。
当然、純資産もマイナスになります。
会社の資本を全て売却しても負債を返済しきれないということですので、非常に苦しい財務状況といえます。
債務超過になった企業が必ずしも倒産するわけではありませんが、倒産リスクは高い状態です。

とはいえ、法人の場合には利益剰余金が多少マイナスになっても、すぐに倒産するようなことはありません。
それでも、マイナスの状態が長く続くほど、その分倒産や債務超過のリスクも高まりますので、経営の健全化を進めるべきです。

過剰な配当が要因でマイナスにはならない

もう1つの原因として、配当金を過剰に分配しすぎていることがあげられます。
株主の信頼を獲得するためには一定金額の配当金を用意しなければなりません。
そして、基本的に配当金は利益剰余金を原資とするため、配当が過分になりすぎれば利益剰余金がマイナスになることも考えられます。

しかし、日本において配当金の過剰分配によって利益剰余金がマイナスになることはまずありません。
前述でも触れた通り、会社法では会社の財政と債権者保護を目的として、一定金額を資本準備金もしくは利益準備金として積み立てるよう義務付けられています。

そのため、日本の法制度において過剰な配当によって利益準備金がマイナスになることはないと考えていいでしょう。

 

会計知識を身に付けて経営に活かそう

利益剰余金は、会社の経営状況を推し量る要素のひとつです。
金額の大小によって一概に「経営状況が良い・悪い」と言い切ることはできませんが、企業の収益力を判断する重要な指標であることに間違いありません。

利益剰余金の正確な定義や類語との違いを理解すれば、他社の分析だけでなく、自社の経営状況の見直しに活用することも可能です。
同業他社との比較から利益余剰金の適正値を把握し、経営の改善に役立てましょう。

自社の経営状況を改善したい場合には、外部のコンサルティングに頼るのも一つの手段です。
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