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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/03/27 15:51

経営

デザイン経営とは?定義や推進される理由・取り組み方法や中小企業の成功事例を解説

読了まで約3分

海外の名立たる企業はもちろん、日本の大手、中小企業でもデザイン経営を取り入れ成功している企業が増加しています。
特に2018年5月に特許庁と経済産業省が発表した、「『デザイン経営』宣言」以降、急速に注目が集まっている経営手法です。

本記事では、デザイン経営の意味や定義、推進される理由、デザイン経営の取り組み方法などについて解説します。
中小企業の成功事例も紹介していますのでぜひ参考にしてください。

 

特許庁と経済産業省発表の「デザイン経営」宣言とは

デザイン経営宣言とは、特許庁と経済産業省が2018年5月に、デザイン経営の定義や役割、実践について提唱した宣言を指すものです。
ここでは、まずデザイン経営の概要についてお伝えします。

デザイン経営の意味と定義

デザイン経営とは、デザインの力を活用して企業価値の向上を実現するための経営手法です。
デザインといっても製品の見た目や機能といった一般的なデザインではありません。

企業のブランド力やイノベーション力を向上させるためのデザインであり、デザインの考え方、思考を活かした経営の姿を指すものです。

デザイン経営宣言では、実践に欠かせない条件として次の2点を挙げています。

  1. 経営チームにデザイン責任者がいること
  2. 事業戦略構築の最上流からデザインが関与すること

この2点を理解し、実際に形にすることがデザイン経営の基本であり、スタート地点だといえるでしょう。

デザイン経営が推進される理由

デザイン経営が推進されるようになった最大の理由は、顧客ニーズの変化です。
モノをつくればつくるだけ売れた時代を経て、現在はモノの豊さによる充実から心の豊さによる充実を求めるようになっています。

多くの業種で製品・サービスのコモディティ化が進む中、顧客が求めるのは単純に高機能・高品質なだけでなく、新たな価値、共感できる価値です。

顧客ニーズの変化に応え、継続的に成長していく企業になるには、経営の変化が欠かせません。
そのため、競合にはない価値を発見し顧客に提供する手法として、デザイナー視点で経営を行うデザイン経営が重視されています。

また、デザイン経営の実施によるブランド力やイノベーション力の向上は、競合との差別化につながるため、産業競争力に直結しているのも推進される理由といえます。

デザインの投資効果

デザイン経営の実施は、顧客ニーズの変化に対応できるだけでなく、確かなリターンを得ることも可能です。
デザイン経営宣言によると、欧米ではデザインへの投資を行う企業が高パフォーマンスを発揮しているという調査結果を紹介しています。

たとえば、イギリスの非営利団体、British Design Councilでは、デザインへの投資により、投資額の4倍の利益を得られると発表しています。
また、アメリカのデザインを経営に活用する企業の株価の動きを追跡する指標である、Design Value Indexを見ると、アメリカの代表的な株価指数であるS&P500と比較して過去10年で2.1倍にも成長していることがわかります。

他にも、世界でデザイン賞に登場することが多い企業166社の株価は、世界の主要株価を合成した株価指数であるFTSE indexと比較して10年での成長率は約2倍です。
これらの結果からも、デザインへの投資が成果につながっていることがわかります。

出典:「デザイン経営」宣言|経済産業省・特許庁

 

デザイン経営が生み出すもの

デザイン経営の実施により生み出される主なものとして、デザイン経営宣言では、「ブランド力」と「イノベーション力」を挙げています。
ここではそれぞれの概要について解説します。

ブランド力の向上

デザイン経営によりブランド力が向上する理由は、顧客に対して一貫したメッセージの発信が可能になる点です。
製品の見た目や機能を向上させ、魅力的なものにするだけがデザインではありません。
店頭での接客、カスタマーセンターでの問い合わせ対応、ECサイトのUIなど、顧客が企業との接触によって得るすべての体験がデザインです。

企業は、顧客に与える体験のすべてをデザインすることで、一貫したメッセージを伝えられるようになり、それが競合との差別化、ブランドの独自性を創出します。
そのブランドに価値を感じる顧客が増え、それがブランド力の向上につながるのです。

イノベーション力の向上

デザイン経営宣言では、デザインを「人々が気づかないニーズを掘り起こし、事業にしていく営み」としています。

常に顧客側の視点に立ち、改めて製品やサービスを見つめ直すことで、潜在的なニーズをくみ取ること。
企業の押し付けでなく、「誰のために何がしたいのか」という企業経営の原点に立ち返ることで、これまでになかった新たな製品・サービスの価値発見を実現します。

その結果、既存事業に縛られない柔軟な事業の創出や新製品の開発が可能になり、イノベーション力の向上につながっていくのです。

 

デザイン経営の取り組み方法

実際にデザイン経営を行うにはどのような方法が必要なのでしょうか。
ここでは、デザイン経営宣言で紹介されているデザイン経営への取り組みとして7つの方法について解説します。

1.デザイン責任者の経営チームへの参画

デザイン経営を実現させるには、デザイン思考ができる人材が欠かせません。

製品やサービス、そして事業そのものが顧客視点で考えられているか、ブランド力向上に寄与しているかを判断できる人材、またはデザイン責任者の協力が必要です。
デザイン責任者の経営チーム参画は、デザイン経営の第一歩といえます。

2.事業戦略・製品・サービス開発の最上流からデザイナーが参画

事業戦略や製品・サービス開発において、そのスタート地点からデザイナーが参画することもデザイン経営の重要なポイントです。

企業視点による事業戦略を途中から顧客視点に変更するには大きな手間がかかるため、計画の最上流段階からデザイン思考で進めていくことが大切です。

3.「デザイン経営」の推進組織を設置する

これまでの経営手法からデザイン経営にシフトするには、経営層だけでなく、全社で取り組んでいく必要があります。

そのためには、デザイン経営を推進するための組織設置が欠かせません。
あらゆる部署とデザイン部署が関わることで、すべての社員がデザイン思考を理解し、積極的に関与できる環境構築を行います。

4.デザイン⼿法による顧客の潜在ニーズを発見する

デザイン経営を実行するには、顧客の潜在ニーズの発見が欠かせません。
そのためには、デザイン手法を活用します。

たとえば下記の項目により、顧客を観察し、潜在ニーズを見つけ出します。

  1. 顧客に直接話を聞く「共感インタビュー」
  2. 顧客の行動や環境に密着して観察をする「シャドーイング」
  3. 顧客体験や感情を時系列で可視化させる「ジャーニーマップ」
  4. 顧客の特徴やニーズを具体的な人物像として形にする「ペルソナ」

5.アジャイル型開発プロセスを実施する

アジャイル型開発プロセスは、一般的にソフトウェアやシステムの開発で使われています。
「計画」「設計」「開発」「テスト」などの行程に分類し、それぞれの工程を繰り返しながら進めていく開発手法です。

デザイン経営においては、「観察」「仮説構築」「試作」「再仮説構築」を繰り返し行い、質とスピードの双方を高めていくことを指します。

6.採⽤および⼈材の育成を行う

社内にデザイン思考で動ける人材が少ない場合、新たにデザイン人材の採用を行う必要があります。
経営チーム以外でも、デザイン経営推進の組織で他部署をけん引していけるデザイン人材は欠かせません。

また、採用だけでなく既存社員の中からビジネス人材やテクノロジー人材を育成することも大切です。
それぞれの部署でリーダーとしてデザイン推進組織とスムーズに連携できる人材を育成することで、デザイン経営を順調に進めやすくなります。

7.デザインの結果指標・プロセス指標の設計を工夫する

企業の売上・利益やブランドイメージといったデザインの結果指標、デザイン思考によるアイデア数、プロトタイプ作成数などのプロセス指標をそれぞれ設計します。

結果指標とプロセス指標の設計により、デザイン経営の方向性を明確にすれば、成果や改善すべき点の可視化が可能です。
その結果、適切な効果検証が実施できるようになり、成功の確率を高められるでしょう。

 

デザイン経営に取り組む中小企業の成功事例

デザイン経営に取り組んでいる中小企業の成功事例を3つ紹介します。

量機器レンタル業の事例

主に計測機器のレンタルを行うある企業では、自社の理念やミッションをすべての社員が自覚し、積極的に発信していける環境づくりを目指してデザイン経営を取り入れました。

具体的には、既存のロゴマークを活かしつつ、自社の理念を込めた新しいロゴマークを作成し、改めてミッションとタグラインを示しました。
これにより、全社員が共通の想いを持って働ける環境構築の実現に成功したのです。

食品製造業の事例

150年以上の歴史を持つ、ある食品製造業では、その歴史を基にデザイン経営によってブランディング力向上を実現しました。

具体的には、Webサイトやパッケージデザインのリニューアルといった見た目の変化に加え、海外へ向けた情報の発信、アーティストや建築家、シェフとのコラボレーションを実施しました。
歴史や伝統を活かしつつ、新たな価値の創造にも積極的に取り組んでいます。

紙箱メーカーの事例

紙箱や包装資材の製作・販売などを行うある企業では、社長自らデザインを学び、デザイン性の高いパッケージを製作して新しい販路拡大を実現しました。

具体的には、本社がある地域に所属しているデザイナーとネットワークを構築し、自社が持つ高い技術とデザインを組み合わせたオリジナルブランドを立ち上げました。
その結果、競合との差別化を果たし主力事業になるまでに成長したのです。

 

企業や組織の成長と継続のためにデザイン経営に取り組もう

デザイン経営とは、デザインの力を活用して企業価値の向上を実現するための経営手法です。
海外ではすでに多くの企業が取り組んでいますが、日本でも特許庁と経済産業省が2018年5月に、デザイン経営宣言を提唱したことで注目を集めています。

従来の企業起点による経営手法から、顧客起点のデザイン思考を活かした経営手法へのシフトは、顧客ニーズの変化に対応するためにも欠かせないものです。
競合と差別化を図り、顧客に選んでもらえる企業になるためにも、率先してデザイン経営に取り組むことをおすすめします。

株式会社武蔵野では、デザイン経営を実現させるための戦略立案をサポートいたします。
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