更新日:2024/03/04 12:51
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コーポレートファイナンスとは?必要な3つの指標やメリット・資金調達方法を簡単に解説
読了まで約4分
コーポレートファイナンスは企業価値を高める手段の一つです。企業の経営戦略を実現させるにはさまざまな施策が求められます。しかし、どのような施策を実行するにも資金がないと動きが取れません。そこで重要になるのが、どのような方法で資金調達を行うかであり、そのための活動がコーポレートファイナンスです。
本記事では、コーポレートファイナンスの理論、プロジェクトファイナンスとの違い、活用のメリット、資金調達の具体的な方法について解説します。
目次
コーポレートファイナンスとは
まずはコーポレートファイナンスの基礎知識、プロジェクトファイナンスとの違いを解説します。
コーポレートファイナンスの理論
コーポレートファイナンスの目的は企業価値の最大化です。資金調達により事業投資を行い、利益を上げて調達元へ返済、還元する活動を指します。
企業価値は、事業活動によって生み出される価値と企業が保有する土地や建物、設備などの資産価値から構成されています。企業価値が向上すれば金融機関からの信頼も高まるため、さらなる資金調達が実現し、コーポレートファイナンスの目的である企業価値の最大化が可能です。
また、コーポレートファイナンスには、金融機関や金融市場から資金を調達することそのものや資金調達の方法など多くの意味があります。他にも金融機関が企業に対し企業価値の引当てとなる金融や企業の財務、金融などの意味で使われる場合があります。
プロジェクトファイナンスとの違い
コーポレートファイナンスと混同しがちな言葉がプロジェクトファイナンスです。どちらも「ファイナンス」であり、企業による財務活動である点は変わりありません。異なるのは財務活動の目的です。
コーポレートファイナンスは特定の事業ではなく、企業全体を対象とした財務活動であり、資金調達も企業全体に対して行います。これに対しプロジェクトファイナンスは、特定のプロジェクトを対象とした財務活動です。そのため、資金調達も特定のプロジェクトに対して行います。
資金調達の評価対象もコーポレートファイナンスは、企業の価値や信頼性です。これに対し、プロジェクトファイナンスの評価対象は、プロジェクトの価値や信頼性になります。
コーポレートファイナンスのメリットと問題点
コーポレートファイナンスは、事業投資に必要な資金を調達できるのがメリットです。しかし、資金調達を実現させるには問題点も存在します。ここでは、コーポレートファイナンスのメリットと問題点について解説します。
メリット
コーポレートファイナンスは借り入れを行う企業の信用力が担保となるため、財務状況や経営状況が良好であれば比較的審査が通りやすいといえます。
また、コーポレートファイナンスの実施により資金調達が実現すれば、事業投資が可能です。その結果、利益を上げられる可能性が高まり、企業価値向上が期待できるでしょう。資金調達により事業拡大を目指せることがコーポレートファイナンスのメリットです。
問題点
コーポレートファイナンスは借り入れを行う企業の信用力が担保です。そのため、信用力が低ければ必要としている資金を調達できない場合があります。
また、資金調達ができた場合であっても企業資産が担保のため、返済ができなくなれば、土地や建物、設備を取られてしまう可能性があることに注意が必要です。
コーポレートファイナンスに必要な3つの指標
コーポレートファイナンスの主目的である企業価値の最大化を実現させる上で欠かせない指標、「NPV」「IRR」「DCF法」について、その詳細と算出方法をわかりやすく解説します。
1.NPV(正味現在価値)
NPVとは、Net Present Valueの略称で、正味現在価値と訳されます。企業が新規事業やプロジェクトに投資すべきかどうかを判断するための指標です。
新規事業・プロジェクトへの投資は、フリーキャッシュフロー(余剰資金)の購入と同じ意味合いがあります。これを判断する基準について、将来的に生み出すキャッシュインフロー(流入する資金)の現在値とプロジェクトにかかるキャッシュアウトフロー(流出する資金)を比較してキャッシュインフローが多く、投資費用が少ないなら投資すべきという判断をします。NPVはキャッシュフローの期待値から初期投資を引くことで求められ、計算式は以下です。
- NPV=n=1tn年後のキャッシュフローの期待値1+r n-l
「r」は割引率、「I」は初期投資額、「t」はプロジェクトの年数を表します。
2.IRR(内部収益率)
IRRとは、Internal Rate of Returnの略称で、内部収益率と訳されます。投資する対象の事業やプロジェクトの「収益率」で、上述したNPVが0になる割引率を指すものです。以下の計算式の「r」を解くことで求められます。
- NPV=n=1tn年後のキャッシュフローの期待値1+r n-l=0
こちらも「r」は割引率、「I」は初期投資額、「t」はプロジェクトの年数を表します。
IRRを指標とする場合、新事業やプロジェクトに投資の判断をする際の最低限必要な利回りであるハードルレートがIRRより大きいかどうかで投資判断をします。
3.DCF法(割引キャッシュフロー)
DCF法とはDiscounted Cash Flowの略称で、割引キャッシュフローと訳されます。キャッシュフローとは、企業が一定期間で受け取る現金と支払う現金の流れを表すものです。
DCF法では、企業が将来的に生み出すキャッシュフローの中でも、自由に使えるフリーキャッシュフローから、一定の割引率をかけて企業価値を算出します。算出方法は次の通りです。
- DCF=将来的に企業が生み出すフリーキャッシュフロー÷加重平均資本コスト(株主資本コストと負債資本コストを加重平均した数値)
コーポレートファイナンスの資金調達方法
コーポレートファイナンスで資金を調達するにはさまざまな方法があります。ここでは、次の7つの方法を解説します。
- 資産売却
- 株式発行
- 助成金・補助金活用
- 社債発行
- 融資
- エンジェル投資家からの出資
- ベンチャーキャピタルからの出資
資産を売却する
自社が所有する資産の中で利用価値が低く必要ない資産を売却し、売却資金を投資に活用する方法です。具体的には所有する必要がなくなった倉庫や設備、営業用の車両の他、有価証券なども対象になります。
不要な資産の売却により、新たな事業やプロジェクトに投資できるのはもちろん、固定コストの削減につながるのも資産売却のメリットです。
株式を発行する
株式会社の場合、自社株式を発行し、市場で第三者に購入してもらう資金調達方法があります。株式発行は返済義務がないため、返済用の資金を用意する必要がありません。そのため、比較的余裕をもって投資を行えます。
ただし、株式発行はそもそも上場できる規模の企業でなければ株式を発行できない、株式の保有割合に応じて配当を支払う必要がある、場合によっては経営権を奪われることがあることに注意が必要です。
助成金・補助金を活用する
国や地方公共団体が行っている助成金や補助金の活用も資金調達方法の一つです。特に新規開業支援や新創業融資など、起業したばかりの会社を支援する助成金、補助金が充実しています。
IT導入補助金や新規雇用、雇用環境整備などの助成金もあり、用途によってさまざまなタイプを選択することが可能です。
ただし、審査が厳しかったり、時期によっては公募していない場合もあったりするため、必ず事前に確認して下さい。
社債を発行する
社債は投資家からの資金調達を目的に企業が発行する債券です。つまり社債は借用証書のようなもので、社債によって投資家から借金をすることで資金を調達します。
49人以下の投資家に対し社債を発行する少人数私募債であれば、担保を必要とせず、通常の社債に比べて手続きも簡単に済むため、中小企業でも利用しやすいのがメリットです。ただし、元本と利息を返済しなくてはなりません。
融資を受ける
自社に信用力や不動産、債権・株式などの担保があれば金融機関から融資を受けて投資に回す方法もあります。担保によっては他の方法に比べて多額の資金を得ることも可能です。
融資額は金融機関によって異なります。ビジネスローンであれば、無担保で審査も早く進みますが、融資額は低く金利が高いのがデメリットです。ただし元本と利息を返済する必要があります。
エンジェル投資家から出資を受ける
起業したばかりの会社であれば、エンジェル投資家から出資を受ける方法があります。エンジェル投資家とは、起業して間もない会社を支援することを目的として投資を行う個人投資家です。
エンジェル投資家による投資は、投資家が起業したての会社を応援したいと思う気持ちもあり、うまくマッチングすれば知名度の低い企業でも融資を受けられる可能性があります。ただし、エンジェル投資家は個人投資家なので、基本的に高額の出資は難しいでしょう。
ベンチャーキャピタルから出資を受ける
将来の成長が見込まれる企業に対して出資を行う投資家を集めた団体、ベンチャーキャピタルからの出資も資金調達方法の一つです。融資と異なり返済義務がないことが大きなメリットといえます。
ただし、出資を受けるためには審査があり、出資を受ける場合は株式の譲渡が必要です。また、経営方針や方向性に関してベンチャーキャピタルからの干渉を受けることがあります。
コーポレートファイナンスを活用し企業価値を高めよう
コーポレートファイナンスとは、資金調達により事業投資を行い、利益を上げることで調達元へ返済、還元していく活動です。コーポレートファイナンスを活用することで、事業資金が足りずに利益を見込める新規事業やプロジェクトを諦める必要がなくなります。
資金調達をする方法は出資や融資の他、助成金や補助金の活用などさまざまです。それぞれにメリットとデメリットがあるため、自社の状況に応じて最適な方法を選択しましょう。
そして資金調達と並行してやるべきは、売り上げの向上です。
特に返済義務のある資金調達をした場合、売り上げが向上しなければ返済ができずさらに経営が苦しくなってしまう可能性があります。そこで経営計画書の作成がおすすめです。
株式会社武蔵野が提供する経営計画書では、経営目標として今期の経営目標(数字)と達成状況を月別に書き込む表がついているため、適切なコーポレートファイナンス活動を行えます。
新規事業やプロジェクトの立ち上げで資金調達を検討されている際は、お気軽に株式会社武蔵野の経営計画書無料お試しをご利用下さい。
執筆者情報
佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役
1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。
経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。
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