2021/05/24 15:57
経営
ピーターの法則とは【年功序列/人事制度】

日本の企業に多く見られる年功序列や能力主義の人事制度には、適切に整備しておかなければ、組織が上手く機能しなくなってしまう注意点がいくつもあります。
そして組織を無能化させる原因には、「ピーターの法則」という階層社会学も関係しているのです。
今回は企業としての組織力に大きく関わる、この「ピーターの法則」について解説します。
「昇進によって人材が無能化する」からくりを指す言葉
ピーターの法則とは、「どんなに優秀な人材であっても、一定の地位を得ることで無能化する」仕組みを示す言葉です。
もともとは1969年に発表された、アメリカの教育学者であるローレンス・J・ピーターの著書
『ピーターの法則―〈創造的〉無能のすすめ』の中で解説された内容から広まりました。
例えばとある生産現場のリーダーから、生産部門の「係長」「課長」というように昇進していく場合。
「課長」の職務内容に見合う能力がなければ、その人材は「係長」が出世の限界となり、「係長」の地位にとどまることになります。
なおかつ「係長」という肩書があることで現状に満足し、高みを目指す努力をしなくなる可能性が高いのです。
また「現場のリーダー」では有能だったものの、実際に昇進してみると「係長」の職務が適切でなかった場合も同様です。
「係長」の役目は果たさないのに、ただそのポジションに居座るだけの人材になってしまう事態も考えられるでしょう。
階層組織の中にいれば、誰でもいつかは自分の能力の限界を迎える役職まで辿り着いてしまいます。
そして成長がストップしてしまい、結果的に無能な人材となってしまう現象がどんな職場にも起こり得る、というのがピーターの法則です。
ピーターの法則が成り立ってしまう要因
それではどのようにピーターの法則が成り立っていくのか、より詳しく解説していきます。
地位を得たことによる自己満足
組織の中で一定の地位を得て、さらに各ポジションが自分の限界だと分かってしまうと、人は向上ではなく現状維持を目指すようになります。
特に降格がない組織では、一度昇進して役職に就けば、努力しなくてもそのままの地位でいられるのです。
この状況が続くことで各階層に成長が止まった人材が集まり、
最終的にはまだ限界に達していない、自己成長を目指す一部のメンバーだけが機能する組織となってしまいます。
不十分な評価にもとづく人員配置
例えば「現場仕事で有能だったから管理職にする」というように、評価基準が曖昧なケースでは、
実際にマネジメントに適した能力があるのか十分に見極められません。
能力に見合わない人員配置が無能なリーダーを生み出し、さらにこの無能なリーダーによる不適切な管理が続きます。
そして不適切な人員配置が継続する悪循環から、無能な人材で占められた組織構成になってしまうのです。
ピーターの法則を防止する対策例
ではピーターの法則が成立しない組織にするためには、具体的にどのような策を講じるべきか、以下からその一例をご紹介します。
評価基準の明確化
まずは昇進の基準が明確にされていないと、適切な人員配置はできません。
なぜなら上司の個人的な考えや部下との人間関係など、余計な要素が評価に加わってしまうためです。
管理側の主観による評価が続けば、本来の職務に必要な能力を持つ人材が正しく機能しなくなってしまいます。
結果として、例え有能でなくても組織内で上手く立ち回れる人材がリーダーとなり、不適切な人事が続き、ピーターの法則が成立するようになるのです。
こうした事態にならないためには、各役職にはどんな能力が必要なのか明確にし、正しい判断基準で評価する必要があります。
成長を促す機会の創出
ピーターの法則が成り立つ大きな原因の1つは、ただ1度の評価から更新されない点です。
要するに降格がないために、何の成果を出さなくても良い状態ができてしまいます。
そして成長意欲がなくなり、昇進した時点では優秀だった人材が無能化してしまうのです。
そこで企業として取り組むべきなのが、一人ひとりが能力を磨き続けるための工夫。
評価制度の見直しはもちろん、管理職向けの教育やスキルアップ支援の実施など、
それぞれが成長を意識できるような体制を構築することでピーターの法則を防ぎます。
社内制度によってピーターの法則は食い止められる
各人の能力を「昇進」だけでなく「昇給」で評価する、数値化して管理して明確な判断基準を確立するなど、
より的確なポジショニングができる体制にすることで、ピーターの法則は回避できます。
またどんなに優秀な人材であっても、不適切な職務や置かれている環境次第では、
ピーターの法則によって無能化してしまう可能性がある認識もしておかなければなりません。
組織全体の無能化を防ぐためには、まずはピーターの法則にならない企業としての土壌が必要です。