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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2024/04/16 17:53

マーケティングに役立つ環境分析とは?活用できるフレームワークや事例など詳しく解説

読了まで約4分

マーケティングは、自社商品やサービスを購入してもらうための仕組みづくりであり、あらゆる企業にとって欠かせないものです。適切なマーケティングを実施するにはさまざまな情報の収集・分析が必要であり、よく使われる手法の一つが環境分析です。

本記事では、マーケティングの成果を高めるために役立つ環境分析について、主な種類や活用できるフレームワーク、実施時の注意点、成功事例などを紹介します。

環境分析とは

環境分析は、企業に関連する内部や外部の経営環境を分析する手法です。

企業はマーケティング活動により、自社が属する業界に興味関心のあるお客様から自社商品やサービスの認知を得て、購入してもらうための仕組みをつくります。

そのためには、お客様がどのようなデザイン、価格、機能を持った商品、サービスを求めているのかを知らなくてはなりません。さらにお客様に商品やサービスを提供する上で自社が抱える課題点についても知っておく必要があります。

また、競合となる企業が販売している商品やサービスの情報、自社が属する業界の市場規模・動向についての情報収集・分析も欠かせません。多くのお客様は複数の企業を比較した上で購入する商品を選択します。競合について理解しておくことが必要であり、環境分析では、これらの情報を収集・分析することが可能です。

 

環境分析の主な種類

環境分析の種類には、内部環境と外部環境の2つがあり、それぞれ分けて分析する必要があります。ここでは内部環境分析と外部環境分析の概要をそれぞれ解説します。

内部環境分析

内部環境とは、自社内にある「ヒト・モノ・カネ・情報」などの経営資源の他、技術やノウハウ、経営戦略、売り上げ、資産など全てを対象とした環境を指します。これらの環境から情報を収集し、自社の強みと弱みを明確にするために行う分析が内部環境分析です。

内部環境分析結果の具体的な例として、以下が挙げられます。

・自社は競合他社に比べて独自技術があり商品開発力は高いが商品の認知度は低い
・競合他社に比べて商品販売数が多いものの、製造設備が十分ではなく需要に供給が追いついていない

以上のように、競合他社と比較して自社の現状を把握できる点が内部分析の特徴です。

外部環境分析

外部環境分析とは、お客様や競合企業、市場動向、社会情勢など自社商品やサービスに影響を与える可能性のある全てを対象とした環境を指します。

内部環境分析の特徴が自社と外部の比較によって分析するのに対し、外部環境分析の特徴は自社が関われない部分に関して分析する点です。例えば、海外での紛争や国内での増税・減税といった政治的環境、競合が開発した新技術や価格戦略などが挙げられます。

これらの外部環境が自社の商品やサービスにどのような影響をもたらすのかを分析するのが外部環境分析です。

 

内部環境分析の代表的な2つの手法・フレームワーク

環境分析に活用できるフレームワークがあります。内部環境分析、外部環境分析それぞれに適したフレームワークの活用がおすすめです。まずは内部環境分析に活用できるフレームワークを2つ紹介します。

1.3C分析

3C分析の3Cとは、「お客様(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」それぞれの頭文字を取ったものです。

市場規模やお客様のニーズと競合他社の特徴を分析した結果を自社の分析結果と比較し、自社の強みや弱みを把握する目的で利用します。また、その結果から自社事業の成功要因(KSF:Key Success Factor)を見つけ出すのが3C分析です。

収集・分析する主な要素として以下が挙げられます。

1.お客様(Customer)
市場規模、お客様の属性・ニーズ、購買行動、満足度、セグメントが可能かどうかなど

2.競合(Competitor)
商品やサービスの特徴、マーケティング戦略、販売チャネル、市場シェア、財務状況など

3.自社(Company)
人的・財務・物的などの経営資源、商品やサービスの特徴、ブランドイメージ、技術力、販売力、供給力、お客様との関係性など

2.SWOT分析

SWOT分析のSWOTとは、「自社の強み(Strength)」「自社の弱み(Weakness)」の内部環境と「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の外部環境の頭文字を取ったものです。

まず自社の強みと弱みを明確にし、その上で市場での機会と脅威を洗い出して自社が取るべきマーケティング戦略を見いだすことを目的に行います。自社の強みと弱みは前述した3C分析で得た結果をそのまま活用します。「機会」と「脅威」については次の通りです。

【機会(Opportunity)】
機会とは、自社のビジネスが成功につながるチャンスを指します。具体的には、「競合の撤退」「認知度の高い企業との業務提携」「規制緩和や補助金制度などの法規制の変更」「お客様のニーズ変化」などです。

【脅威(Threat)】
脅威とは、社会情勢の変化や自社の強みが消されてしまうような環境の変化を指します。具体的には「競合による低価格商品の発売」「海外企業の日本進出」「市場の飽和」「原材料の高騰」などです。

SWOT分析は一般的に内部環境、外部環境の分析を行ったそれぞれの結果を次のような形でクロスさせて自社のマーケティング戦略を検討します。

SWOT分析について詳しくは
SWOT分析とは?分析例・意味や方法・活用目的などを紹介」をご覧ください。

 

外部環境分析の代表的な2つの手法・フレームワーク

外部環境分析に活用できる2つのフレームワークを紹介します。

1.PEST分析

PEST分析のPESTとは、外部環境を「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Social)」「技術(Technology)」の4つに分けて頭文字を取ったものです。それぞれが自社の将来にどう影響するのかを予測し、マーケティング戦略立案に役立てます。4つの要因の主な例は次の通りです。

1.政治(Politics)
労働法や知的財産法の改正、規制緩和の他、海外での紛争や貿易政策、国際関係など

2.経済(Economy)
経済成長率や為替レート、インフレーション率の他、失業率や景気動向、消費者動向など

3.社会(Social)
人口動態や教育水準の他、余暇の過ごし方や健康への意識といったライフスタイルの変化など

4.技術(Technology)
ITの普及や新たな生産技術、特許、サプライチェーン管理や研究開発に関わる投資など

外部環境分析には、競合やお客様の行動など自社に近い環境であるミクロ環境、政治や経済、社会といった自社がまったくコントロールできないマクロ環境があります。その中でもPEST分析はマクロ環境の分析に向いたフレームワークです。

具体的な手順を紹介します。

1.外部環境となるPESTの情報を収集する
2.収集した情報をPESTの4つに分類する
3.分類後、それぞれを「機会」と「脅威」に分類する
4.「機会」と「脅威」がそれぞれ短期的な影響か長期的な影響かに分類する
5.分類した結果からマーケティング戦略を検討する

なお、PEST分析で情報を収集する際は、客観的な事実だけを収集するのがポイントです。主観的な予測も含めてしまうと適切なマーケティング戦略につながらない可能性があるので注意する必要があります。

PEST分析について詳しくは
PEST分析とは?やり方や注意点・環境分析のフレームワークをわかりやすく解説」をご覧ください。

2.5F分析

5F(ファイブフォース)分析の5Fとは、自社に関わる環境要因を分析し、市場の収益構造、競合優位性、自社の収益性などを把握するものです。

1.既存の競合他社
自社の競合となる企業で既にシェア争いをしている企業との関係性

2.新規の参入者
新たに自社が属する業界へ参入してきた企業の規模や動向などから自社の脅威になるかどうか

3.代替品
自社が扱う商品やサービスの代替になる可能性があるもの。代替品の具体例は、動画サブスクリプションサービスと映画館、電子書籍と紙の書籍、自動車と公共交通機関など

4.売り手
自社に商品の部品や原材料を供給する売り手となる企業と自社のパワーバランス

5.買い手
自社商品やサービスを卸す小売店や販売代理店など買い手となる企業と自社のパワーバランス

PEST分析がマクロ環境であるのに対し、5F分析はミクロ環境の分析を行うフレームワークといえるでしょう。

そもそも5F分析は5つの要因を基に現状を把握するために行うフレームワークです。それぞれの要因を洗い出し、その結果を基にPEST分析や3C分析を行い、マーケティング戦略の立案を行います。

5F分析について詳しくは
【事例あり】5F分析とは?意味や目的・実践方法やメリットなど詳しく解説」をご覧ください。

 

環境分析を行う際に注意すべきポイント

マーケティング戦略の立案や企業経営に環境分析は大きな効果を発揮します。しかし、適切に分析をしないと十分な効果は期待できません。そこで環境分析を適切に行うために注意すべきポイントを解説します。

調査内容は深く考察する

環境分析を行う場合、事前にさまざまな情報の収集が欠かせません。しかし表面的な数字だけを集めても成果を上げるのは難しいでしょう。なぜ、そうした数字になったのかを深く考察しなければ、間違った判断をしてしまい、適切なマーケティング戦略の立案もできません。

事前の調査で必要なのは本質的な要因を考察することであり、特に消費者心理の変化を見極めることは重要なポイントといえます。具体的な例は次の通りです。

例1:電化製品

・市場調査結果
そのブランドの電化製品を購入しない人の多くは価格面で選択肢から外していると回答
・実施施策
新規のお客様増加を狙い低価格帯の商品を開発
・結果
元々のお客様は価格も含めたブランドを好んでいたため、低価格路線商品を出したことでお客様離れが進んだ。
またこれまで購入経験のない人は高額商品の多かったブランドの低価格商品は品質が悪いのではと敬遠して購入しなかった
・本質的要因
新規のお客様獲得よりも既存のお客様重視のマーケティング戦略が重要であった

適切なマーケティング施策を実行するには、さまざまな要因の中から消費者が自社ではなく競合を選択するのはなぜなのかの深い考察が必要です。

環境分析は継続的に行う

環境分析の成果を高めるには継続的な分析の実施が欠かせません。テレビやインターネット、友人からの口コミなど情報収集手段の多様化で消費者心理やトレンドは常に変化しています。業種によってはわずか数ヶ月前の成功事例が既に古くなっているかもしれません。

トレンドやニーズの変化を常に把握し、適切なマーケティング戦略を立案するには、定期的な環境分析が必要です。

 

環境分析を活用した具体例

適切なマーケティング戦略の立案をする上で、航空会社と自動車業界での環境分析を活用した具体例を紹介します。

航空会社の事例

環境分析に5F分析を活用した事例を解説します。

ある航空会社における環境分析の環境要因と概要は以下の通りです。

・既存の競合会社
従来の競合に加え、2012年以降は格安航空会社(LCC)の参入により価格競争が激化している
・新規の参入者
LCCの参入も落ち着き、コロナ禍の影響もあり海外航空会社も大きな動きは見られないことから新規参入による脅威は現状では少ないと考えられる
・代替品
コロナ禍でテレワークを導入した企業の増加により、Web会議ツールが普及し、コロナが落ち着いた以降も出張の機会が減っている
新しい代替品としてWeb会議システムに注目する必要がある
・売り手
航空機は海外のメーカーに依存しており売り手の交渉力が強い燃料が高騰しているものの、
仕入れはやめられない買い手賃金上昇率の停滞もありLCCや鉄道など低価格を求めるお客様が増えている

これらの分析から、航空業界の参入者は脅威ではないものの、LCCやWeb会議システムなどの参入で市場シェアは穏やかではないことが分かります。また、燃料や航空機は海外からの輸入に頼っているため、物価上昇や円安などの社会情勢にも注意が必要です。

これらの対策として、観光地やホテル、旅館、鉄道などと提携し、キャンペーンを行うなど新しく付加価値を付けることが求められるでしょう。燃料や航空機などの仕入れ先の確保も検討しなければならないことが分かります。

自動車業界の事例

自動車業界の具体例としてPEST分析を使った環境分析を紹介します。

政治(Politics)
日本政府が掲げるガソリン車の段階的廃止に伴い、電気や水素などガソリン車に変わる燃料を原動力とする車の開発が求められている

経済(Economy)
少子高齢化や製造・整備を行う人員の不足、賃金上昇率の停滞などで自動車市場の縮小のスピードが速まっている

社会(Society)
若者のライフスタイル、価値観の変化、高齢者による免許返納の流れもあり車離れが進んでいる

技術(Technology)
政治的要因や経済的要因、社会的要因から、IT技術を導入しつつ、新たな自動車開発が求められる

以上のように、政治・経済・社会の要因において、脅威の情報を把握可能です。脅威への対策として技術的要因を生かした新しい経営戦略の立案が必要であることが分かります。

 

環境分析を継続し自社戦略に役立てよう

環境分析とは、自社でコントロール可能な経営資源や技術力、販売力などの内部環境と自社ではコントロールできないお客様や競合、市場などの外部環境を分析するものです。内部環境、外部環境それぞれの適切な分析により、自社が取るべきマーケティング戦略が明確になります。

内部環境分析は3C分析やSWOT分析で自社とお客様、競合との比較により自社の強みや弱みを明らかにします。外部環境分析では、ミクロとマクロそれぞれの環境を分析し、自社の立ち位置を明確にすることが重要です。

環境分析は、マーケティング戦略の立案に必要な分析方法の一つで、売り上げを伸ばすには適切な活用が欠かせません。効率的かつ高い成果を求めるのであれば、コンサルタントへの相談がおすすめです。

武蔵野コンサルティングでは、職場環境の整備や業務改善点の発見などの実績により、中小企業の業績を最短距離で伸ばすためのサポートを行なっています。自社の課題を解決し業績向上を目指す方法として、お気軽にご相談下さい。

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執筆者情報

執筆者の写真

佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役

1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。

経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。

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