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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/03/27 15:52

人材育成

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戦略人事とは?注目される背景や要件、役割、導入事例を紹介

読了まで約3分

世界情勢が激変する中でも自社の経営目標を確実に達成するため、昨今注目を集めてるキーワードが「戦略人事」です。
耳にしたことはあっても、具体的な言葉の定義や意義を把握している方は少ないのではないでしょうか。
戦略人事は、労働力人口が減少の一途を辿る現代において、自社の優位性を保つために重要な考え方です。

この記事では、戦略人事の定義や要件、注目される背景、国内での導入事例などを紹介します。

 

戦略人事の定義

戦略人事とは、企業の持つ経営資源「ヒト・モノ・カネ」のうち「ヒト」の価値にフォーカスして、経営戦略の達成に向けた人事戦略を策定・実行することです。
戦略人事の語源は、経済学分野のひとつである「戦略的人的資源管理(Strategic Human Resources Management)」とされており、英語の頭文字をとって「SHRM」と呼ばれることもあります。

戦略人事においては、人事部は単なる業務遂行者ではなく、経営者のパートナーとして経営戦略の達成に寄与することが求められます。
例えば、経営戦略の中に新製品の開発が盛り込まれていた場合、戦略人事では製品開発のノウハウや知見を持った人材の採用・育成や、組織体制の変更を計画します。

人事戦略との違い

人事戦略とは、自社の求める人材の獲得・育成、社内人員の適正活用など、通常の人事業務に関する戦略を指します。
採用計画の策定や社内体制の見直し、人事異動、教育制度の構築なども人事戦略にあたります。

一方、戦略人事とは経営戦略の達成をミッションとして、人事業務だけに留まらず、社内の人的資源を管理・活用することです。
人事戦略は人事業務の一環ですが、戦略人事は経営者の掲げる理念や方針を深く理解し、経営視点も持ちながら戦略を策定・実行することが求められます。

定義の曖昧さ

先ほど、戦略人事の語源として「戦略的人的資源管理」を紹介しましたが、実際には「戦略的人的資源管理」の中で「戦略人事」という言葉は登場しません。
そのため、戦略人事という言葉に明確な定義があるわけではないという点に注意が必要です。

少子高齢化の影響から、長らく採用売り手市場が続いていることなどを背景に「戦略的人的資源管理」に注目が集まり、「人事は経営者の右腕として、戦略的に人材を活用する存在であるべきだ」という論調が強くなりました。
戦略人事は、その中で生まれた造語といっていいでしょう。

 

戦略人事が注目された背景

戦略人事が注目された一つ目の背景として、少子高齢化による労働市場の変化により、従来の雇用制度が維持できなくなったことがあげられます。
日本企業が長らく続けてきた新卒一括採用や終身雇用、年功序列といった雇用制度では経営戦略の達成に必要な人材を確保できず、戦略的な人材マネジメントが必要になっているのです。

また、現代は不確実性の高い「VUCA」の時代ともいわれています。
急速なグローバル化や技術革新、世界的な感染症の流行、未曽有の経済危機など、これまでの常識が通用しなくなる劇的な変化が頻発しており、柔軟性の高い組織づくりが求められています。

そのため、労務管理や給与計算といったオペレーション業務をこなすだけでなく、経営と同じ目線を持って戦略的に人材を活用する役割が、人事に求められるようになっています。

 

ウルリッチが提唱する戦略人事の4要素

戦略人事の考え方は、米国ミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授の著書『MBAの人材戦略』によって提唱されました。

ウルリッチ教授は、同著の中で「人事は経営者のビジネスパートナーである」と説明しており、この論調が一般企業にも広まったものです。
グローバル化やDXなどの必要性が高まった時代背景もあり「戦略人事」という概念が浸透したと考えられます。

ウルリッチ教授の研究では、人事の役割を「HRBP」「CoE」「OD&TD」「OPs」の4つであると定義しています。
それぞれの役割について、詳しく解説していきます。

1.HRBP(HRビジネスパートナー)

HRBPとは「Human Resource Business Partner」の略称であり、人事業務の専門家の立場から、経営者のパートナーとして人事面の戦略を担う機能を指します。
従来型の人事のようにバックオフィス部門ではなく、経営にも積極的に関わる姿勢が求められます。

そのため、経営者の掲げる方針や理念を深く理解していなければなりません。

また、経営層と現場との橋渡しを担うこともHRBPの使命です。
経営層の考えを現場に浸透させるだけでなく、現場の最前線で働く社員の現状やニーズを常に把握し、そこから得られた知見を経営者にも共有して、戦略策定に役立てます。

2.CoE(センター・オブ・エクセレンス)

「エクセレンス(excellence)」とは、優秀なことや卓越していることを意味する英単語です。
つまり、CoEとは採用活動や人材活用といった人事業務に関して卓越した知識やスキル、ノウハウを持ってコンサルティングを行う機能を指します。

例えば、採用活動においては選考などの実務だけでなく、採用要件や採用手法の検討、採用計画の策定まで担います。
他にも、HRBPとして現場から得た社員のニーズや現状などの情報を活かし、人事評価制度の構築や給与体系の見直し、人材トレーニング制度の導入などを検討します。

このように、人事ならではの知見を活かして経営層に提言を行うのがCoEの役割です。

3.OD&TD(組織開発・人材開発)

ODとは「Organization Development」の略称で、戦略人事のために必要な組織開発を行い、組織の生産性をより高めていく役割です。
会社の経営戦略とマッチする人材を育成するためには、組織理念の浸透や企業文化の醸成はもちろん、チーム単位で進むべき方向性を一致させなければなりません。
組織を今後のあるべき姿に導くために、戦略人事では組織開発も担います。

また、TDは「Talent Development」の略称で、人材開発やタレント開発と訳されます。
TDは組織全体を見るODと異なり、個人に焦点を当てて経営戦略の達成に必要な知識やスキル、マインドの開発を行います。

ODとTDはどちらか一方に偏るのではなく、表裏一体のものとして両方の確立を目指すことが重要です。

4.OPs(オペレーションズ)

オペレーションズとは、労務管理や給与計算、各種手続きといった従来の人事におけるオペレーション機能です。
戦略人事においても、実務を正確かつ効率的にこなすことは人事部門の基本となります。

もちろん、単に業務をこなす存在ではなく、CoEで計画したし施策を実施し、現場の課題解決を図ることがミッションです。
例えば、コストを最適化するためにアウトソーシングを検討する、組織の連携を強化するために横断的な意思決定ができる組織体制を構築するなど、最小限の費用で施策を実行し、成果につなげることが求められます。

 

戦略人事の課題

このように、多くのメリットがある戦略人事ですが、実際に運用するには課題も多く、日本において導入に成功している企業はそれほど多くありません。
その背景にある理由を、3つ紹介します。

経営層の理解不足

人事部が戦略人事の重要性を理解していても、経営層の理解が不足しており、導入が進まないという声も多くあります。

人事のプロである人事部門は経営における人材活用の重要性をわかっていても、人事業務を経験したことのない経営層からの理解が得られないというケースがよくあるようです。
戦略人事は経営者の右腕として活躍する存在ですので、経営者が理解していない状態での導入は困難でしょう。

また、戦略人事という言葉の定義の曖昧さも、経営者の理解が進まない一因です。
ビジネス用語として聞いたことはあっても、その意義や目的まで把握している経営者が少なく、一般企業での導入が進まないようです。

従来の人事業務との両立

人事部門の社員が多忙であるため、新しい機能を導入することが難しいケースもあります。

一口に人事業務といっても、その業務内容は多岐にわたります。
人事部では、労務管理や給与管理といった日常業務から、採用活動や人材育成、人事評価、人員配置まで様々な業務を担当しています。
1人の社員が複数の役割を兼務している企業も多く、多忙なため新しい施策を導入する余裕がないのが現状です。

無理に導入を進めると日常業務に支障が出たり、導入が中途半端になったりする可能性がありますので、まずは人事業務の見直しや人事部門の増員など部門内の整理が必要でしょう。

戦略人事を担える人材不足

戦略人事を担う人事担当者は、人事関連の卓越した知識や経験を持ちながら、経営者と対応にやりとりできるだけの経営知識を持ち合わせていなければなりません。
しかし、そのような役割を担える社員が自社内におらず、導入できない企業も多いものです。

戦略人事の担当者を新しく採用しようにも、そのような人材は採用市場においてもまれな存在でしょう。
専門性の高い人材は採用における競争率が高く、さらに経営視点まで兼ね備えている人材となると、より採用は困難です。

社内で時間をかけて人材を育てるなど、長期的な目線での施策が必要になります。

 

戦略人事の導入企業例

ヘルスケア事業を展開するオムロン株式会社では、早期離職の増加や採用人数の不足といった海外拠点の抱える問題に対し、人事部門が先頭に立って課題解決にあたっています。
メキシコの支店において激しい人材競争による離職率の上昇が課題となった際には、「オムロンハイスクール」という高等教育施設を設立しました。
人事目線からの解決施策によって、離職率を低下させることに成功しています。

日産自動車では、リーダーとしての適性を持つ人材を発掘・育成する「グローバルタレントマネジメント部」を設立しました。
スカウトされた優秀な人材を「ハイポテンシャルパーソン」として育成の対象にしたり、キャリアコーチが立案した育成計画に基づいて人員配置を行うなど、リーダー育成や適材適所の人員配置を戦略的に行う施策に力を入れています。

 

人事は経営を左右するキーパーソンに

戦略人事を導入すると、経営戦略の達成に効果的な人材活用が可能になります。
そのため、戦略人事には経営の意思決定にも携わる立場として、人事に関する深い専門性や経営視点が必要です。
これからの人事部には、課題解決意識を持ちながら、柔軟に組織開発ができる手腕や技術が求められるようになるでしょう。

とはいえ、そのような人材は採用市場でも稀有であり、戦略人事の導入が難しい企業も多いのが現状です。
自社リソースでの経営改革が難しい場合には、外部の力に頼るのも選択肢のひとつです。

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