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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/02/27 16:40

経営

資金繰り

流動比率とは?意味や計算方法、目安や判断するポイントを紹介

読了まで約4分

感染症拡大や戦争など先行き不透明な時代に企業として生き残っていくには、長期的なビジョンも必要ですが、短期的な資金繰りも欠かせません。
流動比率は、企業の1年先までの短期的な安全性判断に必要な指標の一つで、経営者としてしっかりと把握しておかないと安定した経営も困難です。

本記事では、自社の財務状況を判断するための指標となる流動比率の概要から計算方法、業種別の目安、悪化した際の改善ポイントなどを解説します。
安定した企業経営実現の参考にしてください。

 

流動比率とは?意味を解説

流動比率とは、流動資産と流動負債の比率を見るものです。

貸借対照表の流動資産を流動負債で割ることで求められる数値で、ここから算出される数値により、会社の1年以内での安全性を判断します。

ポイントは、1年以内という短期間での支払い能力を判断する指標である点です。
現在から1年以内の間に資産として計上できる流動資産、そして1年以内に支払い義務のある流動負債から算出することで、短期での安全性を把握するのが流動比率となります。

流動資産とは貸借対照表の左側に表示される資産の中で、1年以内に現金化できるものです。
勘定科目としては「現金・預金、受取手形、売掛金、棚卸資産、貸倒引当金」などが該当します。

流動負債とは、貸借対照表の右側に表示される負債の中で1年以内に返済する必要があるものです。
勘定科目としては「買掛金、支払手形、短期・長期借入金、未払金、前受け金、前受収益」などが該当します。

流動比率の計算式

流動比率を算出するための計算式は次のとおりです。

流動比率(%)=(流動資産÷流動負債)×100

たとえば、流動資産が1千万円で流動負債が800万円の場合で見てみましょう。

(10,000,000÷8,000,000)×100=125

この場合の流動比率は125%です。

一般的には、今回の例のように流動比率120%を超えていると、短期的な経営状態は安全といわれています。
仮に通常の支払い以外に突発的な支払いが起きたとしても安定した資金繰りが可能です。

逆に流動資産よりも流動負債の額が多く、流動比率が100を切ってしまうと短期的な支払い能力に不安があるといえるでしょう。
流動資産のすべてを現金化しても負債の支払いには足りない状態であるため、早急な対策が必要となります。

【業種別】中小企業の流動比率目安

流動比率は120%以上が安全圏であると説明しましたが、これはすべての業種に当てはまる数値ではありません。

例えば、携帯電話事業、テレビやラジオ放送局、ソフトウェア開発などをおこなう情報通信業の流通比率は200%を超えます。
また、建設業やサービス業も平均的に高い数字となっています。

卸売業や小売業はほかの業種に比べ、流動比率が低くなるのが一般的です。

ここでは、経済産業省による中小企業の流動比率で紹介されている図を参考に業種別の流動比率目安を見ていきます。

最初は、製造企業での流動比率の目安です。同じ製造企業でも衣類や精密機械に関連する業種は比較的、流動比率が高く、鉄鋼、非鉄金属、窯業・土石製品などは中小企業全体の平均(125.5%)よりも低い数値となっています。



引用元:中小企業の流動比率|商工業実態基本調査|経済産業省

次に卸売業ですが、中小企業全体の平均は118.4%と製造業よりも若干低い数値です。
細かく見ていくと、製造業同様に繊維衣服卸売は全体の中でも流動比率が高い傾向にあります。
そしてもっとも低いのは建築材料、鉱物・金属材料等卸売業でこれも製造業と同様の結果です。

引用元:中小企業の流動比率|商工業実態基本調査|経済産業省

最後に小売業ですが、中小企業全体の平均は151.0%とこれまででもっとも高い数値です。
職種で見ると、その他の小売業(家具、医療品、化粧品、書籍、文具など)で195.3%。
次いで各種商品小売業(百貨店、スーパーなど)146.7%。もっとも低い飲食料品小売業でも112.8%と卸売業の平均と大きくは変わりません。

引用元:中小企業の流動比率|商工業実態基本調査|経済産業省

一部の職種では、200%に近いものもありますが、総じて100〜120%という結果であることがわかります。

 

企業の安全性分析の指標と違いを解説

企業には財務状況把握のために、流動比率のほかに経営の安全性を測る指標として「当座比率」「固定比率」「自己資本比率」などがあります。

短期的視点で安全性分析を行う流動比率と当座比率に対し、長期的視点で安全性を判断する固定比率と自己資本比率。
それぞれについて簡単に解説していきましょう。

流動比率と当座比率の違い

当座比率とは、流動比率同様、企業の短期的な安全性を見るための指標です。

流動資産で解説した環境科目の中でも「現金、預金、売掛金、受取手形、有価証券」など特に換金性の高い資産(当座資産)と流動負債から比率を算出します。
安全といわれる当座比率は100〜120%です。

しかしいくら当座比率が高くても、当座資産に含まれる売上債権が流動負債の中の仕入債務より多額である場合には、あまり安心することはできません。

計算式は以下のとおりです。

当座比率(%)=(当座資産÷流動負債)×100

例えば、当座資産が500万円で流動負債が400万円の場合で見てみましょう。

(5,000,000÷4,000,000)×100=125

この場合の当座比率は125%です。

流動比率との違いとしては、特に換金性の高い当座資産だけを対象とする点です。
流動比率よりもさらにリアリティのある安全性を把握できます。

たとえば、流動資産の勘定科目である、棚卸資産とはいわゆる在庫を指すものです。

もし在庫が1年以内に売却できなければ、1年以内に現金化という前提が成り立ちません。

棚卸資産が現金化できなければ、流動比率が100%を下回ってしまう可能性もあるため、よりシビアに短期での安全性を判断する当座比率が必要になるのです。

固定比率

固定比率とは、流動比率や当座比率とは異なり、長期的な安全性を判断するための指標で、純資産となる自己資本に対する固定資産の割合で算出します。
固定資産とは、土地や不動産、設備、機械などを指すもので、流動資産のように1年以内に現金化するのが難しいもしくは現金化する予定のない資産です。

固定比率の計算式は以下のとおりです。

固定比率(%)=(固定資産÷自己資本)×100

たとえば、500万円の土地を購入する際、自己資本が400万円で借入金が100万円だとすると固定比率は125%です。

(500÷400)×100=125

固定資産の購入に際し、借入金の割合が多ければ将来的に返済の負担が大きくなります。

そのため、固定比率の目安は100%です。
100%を超えてしまうと、借入金の依存度が高いということになるため改善が必要となります。

自己資本比率

自己資本比率は、固定比率と同様、企業の長期的な安全性を判断するための指標で、総資本に対する自己資本の割合で算出します。

自己資本比率の計算式は以下のとおりです。

自己資本比率(%)=(自己資本÷総資本)×100

たとえば、自己資本が500万円で総資本が1,250万円だとすると計算式は以下のとおりです。

(5,000,000÷12,500,000)×100=40

この場合の自己資本比率は40%です。

自己資本とは、商品、サービスの販売から得た利益や株主からの出資などで得たお金など返済する必要のない資本です。
総資本の中で返済する必要のない資本が多ければ、企業としての安全性が高いといえます。

一般的な目安は40%以上で、自己資本率が20%を切ってしまうと、健全な経営は難しくなります。

「固定比率」・「自己資本比率」は、流動比率や当座比率のように支払い能力を見る指標ではないですが、借金の依存度などを見る際に活用できます。

企業の安全性を図る経営分析の指標について詳しくはこちらの記事をご参照ください。
経営分析の手法や目的は?4つの重要指標と基礎知識

 

流動比率が適正でも留意すべきこと

流動比率は120%あれば安心と解説しましたが、120%以上あっても必ずしも安心とはいえない場合もあります。
具体的には「支払いに充当できない流動資産がある」「上債権回転期間が買入債権回転期間より長い」場合です。

それぞれについて詳しく解説します。

支払いに充当できない流動資産もある

通常、流動資産は1年以内に現金化できる資産を指しますが、場合によっては支払いには充当できなかったり、すぐに現金化できない可能性があります。

たとえば、定期預金ですが、1年以内に満期になるとしても、借入担保に差し入れられていれば取り崩しができません。
また、売掛金も売掛先が倒産してしまえば回収できず、現金化は難しいでしょう。

長期滞留で商品としては販売が難しい棚卸資産も流動資産ではありますが、販売ができずに現金化はできません。
ほかにも、有価証券の市価が下がってしまい、売りたくても売れないといったケースもありえます。

流動比率の数字だけを見るのではなく、それぞれが本当に現金化可能なのか、ほかに現金化がしやすい資産はないかについては必ず把握しておかなくてはなりません。

上債権回転期間が買入債権回転期間より長い場合は注意

売上債権回転期間とは、企業の売上高に対する売上債権の割合を指すものです。

たとえば、売掛金が実際に現金になるまでの期間が短ければ、債務の支払いに余裕が生まれ、資金繰りは健全化します。
そして、買入債権回転期間とは、企業の売上高に対する買入債務の割合を指すものです。

買入債権回転期間は売上債権回転期間とは逆に長いほうが、支払いまでに現金を用意しやすくなり資金繰りが健全化します。
そのため、売上が現金化する期間が支払いを行う期間よりも長くなってしまうと、売上があっても支払いができなくなり、資金繰りが厳しくなってしまうのです。

 

流動比率の改善には流動資産を増やすか流動負債を減らす必要がある

現時点で流動比率が100%を切ってしまっている場合、短期的に資金繰りが厳しくなるリスクが高まるため、改善が必要になります。
短期的な資金調達先を確保し、売上債権の回収期間を短くしたりと、見直しが必要です。

改善のポイントは二つ、流動資産を増やすか流動負債を減らすかです。
それぞれの具体的な方法について解説します。

流動資産を増やす方法

流動資産を増やすといっても、現金化が難しい資産を増やしても意味がありません。

たとえば、棚卸資産を増やす場合でも、できるだけすぐに売れる商品を増やす必要があります。
最も理想的で健全な流動資産を増やす方法は、商品を販売して利益を上げることです。

もう一つの方法としては、固定資産の現金化が挙げられます。

不要な土地、不動産があれば売却し現金化を進めましょう。
固定資産の売却益は流動資産に算入できるので、流動資産の増加につながります。

流動負債を減らす方法

流動負債を減らす理想的な方法は、商品を販売して利益を上げることです。
利益を上げられれば、買掛金や負債の支払いに回せるため、流動負債を減らせます。

理想的なのは、利益を出して買掛金や負債を返済することですが、短期で商品の販売を増やすことが難しい場合は、短期借入金から長期借入金の借り換えです。

また、取引先との交渉で買掛金の支払い期限を長くしてもらう方法もあります。
できるだけ支払いを後に伸ばせれば、その間に利益を上げ、流動負債を減らせるようになるでしょう。

 

流動比率100%を下回る場合は早めの対策を

先行き不透明なこの時代に企業として生き残っていくには、将来を見据えた行動が大切です。
流動比率などの決算書を活用し、競合に遅れることなく経営戦略を進めていかなくてはなりません。

しかし、経営戦略を進めていくには資金繰りにも余裕がないと難しいでしょう。

新たな事業への参入や新商品の開発などの計画を立てても資産がなくては動けません。

そのため、流動比率が100%を超えているからといって安心するのではなく、流動資産の中に回収できそうにない売上債権がないか、短期貸付金の回収に問題はないかなどを確認し、資産がショートしてしまわないようできるだけ早めの対策を取りましょう。

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