2020/08/18 11:27
経営
【労働分配率について解説】利益と人件費のバランスを知ろう【経営/財務】

事業を円滑に進めるためには、ビジネスモデルに合った売上高と人件費の比率を適切に把握することが重要です。
そのために役立つのが「労働分配率」です。
労働分配率を正しく理解することで、より実態に即した経営判断ができるようになるでしょう。
労働分配率とは
労働分配率は、付加価値に占める人件費の割合を示す指標です。
労働分配率が高いということは、人件費に割く費用が多い状態を指します。
単純にいえば、給料が高い会社、あるいは機械などの設備ではなく、人的資源への依存度が高い会社です。
たとえば、サービス業を主力事業とする会社は、労働分配率が高くなりがちです。
一方、積極的な設備投資による自動化・省力化を進めている企業においては、人件費ではなく、
設備の減価償却費のほうが多くなるため、労働分配率は低くなる傾向にあります。
上記のことからもわかるように、労働分配率が高ければ良い、あるいは低ければ悪いという単純なものではありません。
それぞれの事業形態に合った、適正な労働分配率が達成されているかを見ることが重要です。
ここでいう人件費には、従業員の給与や福利厚生費などだけではなく、経営側の役員報酬なども含まれます。
労働分配率が適切だからといって、必ずしも従業員が適切な給与をもらっているとは限りません。
さらに、分母となる付加価値の大きさによっても、労働分配率は変化することも頭に入れておく必要があるでしょう。
企業にとって、労働分配率は重要な経営指標として役立つものです。
まずは、自分たちのビジネスモデルに即した、適切な値になっているかを確認しましょう。
労働分配率の計算方法
労働分配率の計算式は、以下のとおりです。
「労働分配率=人件費÷付加価値(売上総利益・粗利益)×100」
たとえば、売上高が年間1億円で粗利益が4,000万円、人件費に2,500万円かかっている企業があったとしましょう。
計算式は、「2,500万円÷4,000万円×100」となり、労働分配率は62.5%です。
計算の際には、「付加価値」と「人件費」について正しく理解しておきましょう。
付加価値とは、ざっくりいえば売上総利益(粗利益)のことです。
付加価値の計算方法は、大きく日銀方式の加算法と、中小企業庁方式の控除法の2種類に分けられます。
加算法は、経常利益や人件費、減価償却費といった付加価値をすべて足していく方法です。
控除法では、売上高から材料費や外注費などの外部購入価値を差し引いて計算します。
しかし、いずれも計算方法は非常に複雑になってしまうのが難点です。
ここでは単純に、付加価値は粗利益としてとらえておいて問題ないでしょう。
一方、人件費とは、企業が持つ分配可能な付加価値のうち、どれくらいが労働力として支払われているかを示すものです。
ここでいう人件費とは、役員の報酬やアルバイトの給与はもちろん、退職金や退職年金の掛金、ボーナス、
従業員の教育費用、法定福利費なども含まれるので、忘れず計算に入れておきましょう。
労働配分率の目安とは
労働分配率は、業種によって目安とされる数値があります。
たとえば、人的資源への依存度が高い、労働集約型のサービス業なら70%程度、一般的な製造業や電気工事業などは60%程度、
スーパーやコンビニ、消費財卸売業などは50%程度です。
製造業でも自動化・省力化が進んでいる資本集約型の場合は、労働分配率が40%になることもあります。
国内全体でみれば、50%前後が平均でしょう。
一方、美容業も労働集約型ですが、広告宣伝費が高くなりがちなので、労働分配率は低くなる傾向にあります。
このように、人間の労働力に頼る割合が、労働分配率の高さに直結するような単純な構造にはなっていない点に注意しましょう。
また、会社の規模によっても異なります。一般的に、小規模だと労働分配率は高くなるでしょう。
また労働分配率は、業種だけでなく、個々のビジネスモデルにも大きく左右されるため、
自社の労働分配率が業界の平均と違うからといって、すぐに危機感を持つ必要はありません。
実際、同じ業種内でも、会社ごとの労働分配率には開きがあります。
しかし、あまりにもかけ離れている場合は、経営に何らかの問題が生じている可能性もあるでしょう。
無駄な人件費の支出がないか、人的資本への投資は適切か、定期的に見直すことが重要です。
経営の問題を追及して最大限の利益を
労働分配率は、企業において生産された付加価値全体のうち、
どれくらいが人的資本に分配されているかを知るために必要不可欠な指標です。
労働分配率を正確に算出して管理することで、経営改善にも役立つでしょう。
現状の課題を解決し、今後さらに業績を伸ばしていくためにも、自社の業種やビジネスモデルから、
適正な労働分配率を考える必要があります。
今回の記事を参考にして、労働分配率について、今一度見直してみてはいかがでしょうか。