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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/06/27 10:00

経営

人材育成

SECIモデルとは?ステップや事例を学んでナレッジマネジメントに活用しよう

読了まで約5分

1996年3月出版の『知識創造企業』で提示され、エコノミスト誌を始めとして国際的な注目を浴びたのが、ナレッジマネジメントの基礎理論の「SECI(セキ)モデル」です。

知識を共有することで、そのベテラン社員の業務負荷が将来的に軽減できるような取り組みであることを伝えたり、表出化する時間や場を定期的に作り、表出化することへのインセンティブを用意するなどしていきましょう。

SECIモデルとは

SECI(セキ)モデルとは、個人が持つ知識や経験などの暗黙知を、形式知し組織全体で共有し、新たな知識を生み出すフレームワークのことで、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏らが提唱しました。

暗黙知とは、個人の中にあるものの「言葉にできない」「言語化しても伝わらない」といった人に説明できない状態の知識を指します。
形式知とは、言葉文字や図などといった人に説明できる形に変換された知識のことです。

一方、野中教授らは、1980年代に国内の製造業における製品開発のプロセスを研究し、どのようにして知識の共有や活用を行い、組織的な知識資源を形成しているのかを考察し、このSECIモデルを明らかにしました。

 

ナレッジマネジメントとは

SECIモデルを語る上で必ず出てくる言葉として、「ナレッジマネジメント」があります。

ナレッジマネジメントとは、個人がもつ知識やノウハウを組織で共有し、新たなイノベーションの促進と生産性の向上を目指す管理手法です。
日本語では、「知識管理」「知識経営」などと訳されます。

ナレッジマネジメントにおいて、個人が持つ暗黙知を誰もが理解できる形式知に変換する際に、SECIモデルが役に立ちます。

ナレッジマネジメント理論によれば、すべての知識はまず暗黙知として誕生します。

しかし、暗黙知は個人の体験や経験に依存しているため、そのままでは他人との共有が困難です。

高度な知識やノウハウを持つベテラン社員が、自身の知識を共有するメリットはなく、むしろ自身の経験から得たノウハウを同僚に知られたくないと考える人もいるでしょう。

SECIモデルでは、この暗黙知を言語化・概念化し、「形式知」へ転換することを目指します。
従来個人が持っていた経験知識やスキルなどを企業内で共有することで、業務の効率化やコミュニケーションの円滑化を図り、創造的な仕事へつなげます。

形式知は言語・図表・数式など、客観的な手段で言い表せるため、他人との共有が容易です。
暗黙知を形式知に変換できれば、職人の「勘・コツ」を始めとした言語化が難しいノウハウ等も、全社的に共有することが可能になります。

ナレッジマネジメントはなぜ重要なのか?

なぜSECIモデルのようなナレッジマネジメントが必要なのでしょうか。

経営学者のピーター・ドラッカーは、1993年の『ポスト資本主義社会』で、企業経済において「知識(Knowledge)」こそが唯一の経営資源だと述べています。

豊富な知識やノウハウを持つ企業は、競合他社には真似できない製品やサービスを創造し、高い企業競争力を維持します。
また、知識やノウハウを現場の従業員で共有・継承して、作業の属人化を防ぎ、高い生産性を発揮することが可能です。

しかし、こうした知識やノウハウは時間が経つにつれて古くなり、陳腐化します。
知識の陳腐化を防ぎ、企業競争力を保つためには、社内で常に新たな知識を生み出し、
共有していくナレッジマネジメントの仕組みが必要不可欠です。

着実に成功体験を積み重ねる

SECIモデルを社内で初めて行う場合は特にスモールスタートを意識し、
特定部署や特定支社などでの実験的な取り組みを行い、社内での成功実績を着実に掴んでいくような進め方をおすすめします。

ナレッジマネジメントに役立つツールを活用する

せっかく集めた知識を形式知化しても、誰もが気軽に引き出せるようにしなくては意味がありません。
例えばマニュアルを見つけにくかったり、ナレッジベースの検索性が悪かったりすると、結合化による新たなアイデアの創出を阻害しかねません。
社内FAQシステムやナレッジマネジメントツールを導入することで、結合課の懸念を回避できます。

 

SECIモデルを実践する4つのステップ

それでは、SECIモデルを導入する企業は、どのような事柄に気をつければよいのでしょうか。
SECIモデルを実践するには、次の4つのステップが必要です。

1.共同化(Socialization):経験や体験を他者に伝える

日々の業務を通して得た知見や、職人・技術者の「勘・コツ」は、個人の経験や体験に依存する暗黙知の状態です。
SECIモデルでは、知識やノウハウを全社的に共有するための前段階として、まず暗黙知を暗黙知のまま
他者に伝えることを目指します。

このプロセスを「共同化」といいます。

具体的な手法としては、先輩の指導のもとで実際に業務をしてみる「OJT(On-the-Job Training)研修」や、
職人・技術者による指導が挙げられます。

まだ暗黙知は言語化されていないため、この段階では見様見真似で知識を伝達することになります。

2.表出化(Externalization):暗黙知を言語化する

表出化のプロセスでは、暗黙知を言語・図表・数式などでわかりやすく表現し、形式知に変換することを目指します。
朝礼やミーティングなど、皆が集まる場で暗黙知を形式知に変換することで、個々人の知識やノウハウを
メンバー内で共有できます。

また、暗黙知をマニュアルや業務フローといった形に落とし込めば、全社的に素早くナレッジを共有することが可能です。

3.連結化(Combination):形式知を業務プロセスに取り入れる

言語化された形式知を実際に業務プロセスに取り入れていくのが、連結化のプロセスです。

単に形式知をそのまま利用するのではなく、他の形式知と相互に関連付けることで、
相乗効果により新たな知識を生み出すことを目指します。

具体的な手法としては、グループウェアやナレッジベース(知識ベース)の活用が想定されます。

こうしたプラットフォームを通じ、部署・部門の垣根を超えて形式知を結合していくことで、
さらなるアイデアやノウハウの創出につながります。

4.内面化(Internalization):形式知を暗黙知として吸収する

最後に、内面化のプロセスでは、表出化や連結化のプロセスを経て共有された形式知をふたたび暗黙知に転換します。
日々の業務や作業を通じて、「体で覚えられる」「勘・コツをつかむ」ように知識を内面化していく過程です。
内面化のプロセスに到達したら、ふたたび共同化のプロセスに戻ります。

SECIモデルは4つのプロセスを繰り返し、絶えず新たな知識を生み出すための仕組みです。

 

SECIモデルの各ステップに必要な4つの場とは

創発場

「共同化」が行われるのが「創発場」です。

実際に業務を経験してみないと伝えられないものもあれば、
ランチ会や休憩室での会話などの気軽なコミュニケーションのなかで知識を交換するケースもあります。

ここではできる限り気軽でフラットなコミュニケーションを行うことで、効果的な共同化プロセスが実現できると言われています。

対話場

「表出化」を行なうのが「対話場」です。

対話場は、暗黙知を形式知に変換する表出化プロセスにおいて重要な場です。
マニュアルや資料作成などの業務や会議におけるディスカッションを通じて、形式知化していきます。
ここでは単なる雑談で終わることがないよう、しっかりと暗黙知を形式知に変換できるような場にすべきですし、
そうした場を意識的にスケジューリングするなどして設けるのが重要です。

システム場

「連結化」が行なわれるのが「システム場」です。

「連結化」は、複数の形式知が結合するステップのため、各従業員が形式知を持ち寄れる場が必要とされます。
直接の対話ではなくむしろオンラインMTGを行ったり、ナレッジマネジメントツールを利用しながら会議を行う方が、
URLや資料の共有がしやすいので効率的です。

実践場

「内面化」が行なわれるのが「実践場」です。

従業員一人ひとりが形式知を繰り返し実践して知識を習得するため、特に決まった場があるわけではありません。
各個人のデスクや作業場、あるいは昨今であれば自宅(テレワーク)のケースもあるでしょう。

 

SECIモデル運用における課題

SECIモデルのステップや場についてご紹介してきましたが、実際に企業で取り組むにあたってはいくつかの課題や問題点も存在します。

情報を表出化するメリットが少ない人もいる

ベテラン社員は長年の努力や経験によって高度な暗黙知を持ち合わせていますが、それらの知識を表出化(言語化・図解化)することにメリットを感じない方も多いのではないでしょうか。

なぜSECIモデルを実践し、組織全体で知識の共有が必要なのかをきちんと説明し、理解を促す必要があります。

知識を共有することでのベテラン社員の業務負荷が軽減できるような取り組みであることを伝えたり、表出化する時間や場を作ることでインセンティブを設けるなど、仕組みで解決する方法を検討することも重要だと言えます。

高度な知識やノウハウを社内全体で共有するのが難しい

暗黙知を形式知したとしても、それを内面化し自分のものにできるまでには個人差があり、それなりのエネルギーを必要とします。
SECIモデルの考え方における内面化は、個人の適正や能力次第では途中で止まってしまう場合もあります。

また、部署を超えた横断的な共有ができなければ社内全体での運用は難しくなるため、対策が必要です。

活動のゴールに明確な定義がない

SECIモデルは継続的に実行されるものであるため、どこまで知識を昇華させられればゴールなのかといった定義を決めることが非常に難しい問題です。

ナレッジマネジメントの活動全体で考えると、様々なジャンルや専門分野の知識が存在するため、各知識においてどの段階でどのように評価すべきかは困難を極めます。

中間目標を設けて定期的な振り返りを行ったり、成果を適切に評価する体制づくりが必要です。

 

SECIモデルの活用事例

ここからは、SECIモデルを取り入れ活用している企業の具体例をご紹介します。

NTT東日本

NTT東日本法人営業本部では、リアルな場とバーチャルな場の両方でナレッジを共有する場所を設けました。

リアルな場では席を固定しないフリーアドレス制の導入、チーム同士の対話を目的とした場を設置など、
社員同士のリアルな場でのコミュニケーションを重視することで、暗黙知から暗黙知へとナレッジ共有しやすい環境を構築しました。

バーチャルな場では、全社員と部・課などの組織単位でのホームページを開設し、
個人の得意業務やチームでの良い成果を残した折衝記録などを公開して、ナレッジ共有の場として活用しました。

富士ゼロックス

富士ゼロックスでは、製品開発工程の中にSECIモデルを取り入れ、現場のエンジニアの知識を広く深くすることによって、製品開発に役立てています。

大人数が効率的に情報共有するために製作された独自のシステムを構築し、各工程の責任者が共有すべき優れた情報を登録することで、
制作過程におけるムダを省くことに成功しました。

エーザイ

医薬品メーカーのエーザイでは、「業務時間の1%を患者様とともに過ごす」ヒューマン・ヘルスケア(hhc)活動を実施し、
患者と過ごすことにより得た暗黙知から組織としての新しい価値を生み出すためにSECIモデルを応用しています。

職人や技術者の「勘・コツ」など、個々人の感覚に基づく知識やノウハウは、そのままでは全社的に共有できません。
しかし、SECIモデルを活用すれば、あいまいな知識やノウハウを言語化し、経営資源として活用できます。

本記事では、SECIモデルの特徴や、SECIモデルを実践する4つのステップを解説します。

 

SECIモデルを活用して知識・経験・ノウハウの形式知化を

暗黙知を形式知に変換し、言語化しづらい「勘・コツ」を全社的に共有するのが、SECIモデルです。
SECIモデルには共同化・表出化・連結化・内面化の4つのフェーズがあります。

業務プロセスの改善や新たな製品・サービスの開発には、知識・経験・ノウハウの蓄積が必要不可欠です。

SECIモデルを活用し、従業員一人ひとりの知識・経験・ノウハウを形式知化しましょう。

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