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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2024/04/01 11:00

経営

ナッシュ均衡とは?定義や具体例・ゲーム理論との関連性などわかりやすく解説

読了まで約4分

企業が継続的に成長を続け、業界で生き残っていくには適切な企業戦略が欠かせません。
そこで重要になるのは競合の存在です。
多くの場合、企業戦略は競合との立ち位置の違いや状況、戦略を見つつ立案し、そのうえで自社が利益を得られるポジションに立てるようにしなくてはなりません。

そこで本記事では、競合の戦略を見つつ、自社の戦略を立てるためのヒントになるゲーム理論として「ナッシュ均衡」についてわかりやすくお伝えします。
起業戦略に役立つ情報を探している経営者や代表者の方はぜひ参考にしてください。

ナッシュ均衡とは

ナッシュ均衡について理解するには、まずゲーム理論の概要を知る必要があります。
ゲーム理論とは、自分(自社)が求める結果に対し、他者(競合)の行動が影響する場合にどのような戦略を立てるかについて考えるものです。

元々は経済学者や数学者が考え出した理論ですが、現在では、経営学、社会学、政治学などさまざまな分野で応用されています。

ゲーム理論を理解するメリットとしては、相手の出方を読み、そのなかで自分の得点をできるだけ高くし、失点を減らすにはどうすべきかがわかるようになる点です。

常に競合のなかで戦う必要のあるビジネスにおいても、ゲーム理論の理解が利益向上に大きく役立つといえるでしょう。

ナッシュ均衡の定義・意味

ナッシュ均衡とは、非協力を前提としたゲームにおいて、他のプレーヤーとの関係性のなかで全員が最適な戦略を取っている状態を指すものです。
この時ポイントとなるのは、すべてのプレーヤーが「均衡」を保っている点にあります。

ナッシュ均衡においては、自分だけが戦略を変えても得をしません。
例えば競合との価格競争で低価格戦略を取ると利益がマイナスになる状況では、どちらも現状のままでいるのが利益を得るためには最適な戦略となります。
つまり両者で均衡を保っている状態であり、これがナッシュ均衡です。

数学者のジョン・ナッシュが提唱

ナッシュ均衡を提唱したのは、1928年にアメリカのウエストバージニア州で生まれ、ゲーム理論に多大な貢献をした数学者であるジョン・ナッシュ氏です。

ジョン・ナッシュ氏は1950年にプリンストン大学で博士号を取得し、1994年には「非協力ゲームの理論における均衡の先駆的な分析」でノーベル経済学賞を受賞しています。

 

ナッシュ均衡とゲーム理論

ゲーム理論とは、利害関係をもつ相手がいるなかで自分と相手の利益を考慮しつつ、自分にとって最適な方法を数学的に導き出す理論です。
ゲーム理論の提唱者はハンガリー出身でアメリカで数学者となった、ジョン・フォン・ノイマン氏で、パソコンの基本的構造の設計を考案した人物としても知られています。

ナッシュ均衡はゲーム理論の一つであり、より深く理解するには、「囚人のジレンマ」や「チキンゲーム」「調整(コーディネーション)ゲーム」についても知っておくとよいでしょう。
この後、それぞれについて解説します。

例1.「囚人のジレンマ」とは

ゲーム理論で最も有名な囚人のジレンマとは、二人の囚人が互いに意思疎通のできない状態で尋問を受けた際の選択を例にとったゲーム理論です。

具体的には、それぞれがどのような選択をするかで次のように刑期が決まるとします。

  • 一人が自白したが、もう一人は自白しないとした場合、自白したものは無罪。自白しなかったものは懲役10年
  • 二人とも自白しない場合は懲役3年
  • 二人とも自白した場合は懲役6年

この場合、それぞれがどの選択を取るかで次のように刑期が変わります。

この場合、両者が一番避けたいのは自分が黙秘で相手が自白する状況です。
そのため、二番目に刑期が短くなる両者黙秘が最適な選択肢となります。
お互い自白せずに懲役3年の刑罰を受ける最良な状態のことを「パレート最適」と言います。

しかし、両者は意思疎通ができないため、自分が黙秘をした場合、相手は自白してしまうのではないかと疑心暗鬼になり、結局は両者とも自白して懲役6年になってしまうことが考えられます。

黙秘をしていれば懲役3年で済んだものが、自身の利益を考えたばかりに最適な選択ができないケースがあります。
これを囚人のジレンマといい、互いに自白という選択をするのがナッシュ均衡です。

例2.「チキンゲーム」とは

囚人のジレンマは相手の選択に関わらず最適な選択を取れる可能性がありますが、チキンゲームは最適な選択が相手の行動に依存する形になるゲーム理論です。

正面に壁や崖のある場所で車に乗り込み、どちらが衝突もしくは落下せずギリギリの位置で止まれるかを競うため、チキンレースとも呼ばれます。
ちなみにチキンとは、海外で臆病者をチキンと呼ぶことから名付けられました。

スタート前に自分の戦略を決め、スタート後は相手の行動にかかわらず、戦略を遂行しなくてはならないルールです。
「回避」は途中で止まり、「直進」はギリギリを目指して走ることを意味します。

両者共に回避を選択した場合、リスクは避けられますが、どちらも臆病者と呼ばれる、つまり両者負けと変わらない引き分けです。
逆に両者が直進を選択した場合、臆病者と呼ばれることはありませんが、場合によっては壁に衝突、もしくは崖から落下してしまう場合があります。

ギリギリまで行ければ称賛を得られる最適な選択とはなるものの、リスクを伴うため、結果としては両者共に回避を選択するのが合理的といえるでしょう。

例3.調整ゲーム(コーディネーションゲーム)とは

調整ゲームとは、相手と同じ選択をすることが正解とされるゲームです。
例えば友だち同士で出かける際、Aは「水族館に行きたい」Bは「図書館に行きたい」と考えているとします。

この時、互いにどこに行くと言わずに出かけたとして、その場所で会えれば得点1。
自分の行きたかった場所で会えれば得点2です。
そして、会えなかった場合は得点0とします。

自分が行きたい場所に行き、そこで友だちと会えるのが最適な選択となりますが、相手がどう動くかで結果は変わるため、相手の心情を読むことが必要となります。

ただ、相手の行きたい場所に行ったが会えないという最悪の結果になる場合もあるため、必ずしも相手の心情を読むことが正解とは限らないのが難しいところです。

 

ナッシュ均衡は複数(2つ以上)あるケースも

チキンゲームや調整ゲームでは、選択肢により必ずしもナッシュ均衡が1つとは限らないことがわかります。
例えば前述した調整ゲームにおいて、両者が同じ行動を取ることが正解です。
そのため、水族館で会っても図書館で会ってもナッシュ均衡は成立します。

この場合、ナッシュ均衡が実現しやすくなるには、二人の関係性が重要です。
例えばAはBが相手に合わせるのではなく、自分の好きな場所へ行くという性格だと知っていれば、Aは図書館を選択するでしょう。

逆にBはAが自分の性格を理解してくれていると考えていれば、Aは図書館に来ると確信して図書に行きます。
その結果、両者が同じ行動を取ることが最適の選択であるというナッシュ均衡の定義が成立するのです。

パレード最適とはイタリアの経済学者であるヴィルフレド・パレード氏が提唱したもので、資源が最大限無駄なく配分されている状態です。

 

ナッシュ均衡とパレート最適との関連性

パレート最適とは、資源配分を行う際に「誰かの状況を改善しようとすれば、他の誰かの状況を悪化させることになる」状態を指します。
資源が最大限利用されている状態のことで、イタリアの社会学者ヴィルフレド・パレートによって提唱されました。

ナッシュ均衡は、ゲーム理論において各プレイヤーが最適な戦略を取った場合に至る安定点であり、パレート最適は、ある状態が他の個人やグループの状態を改善する余地がないときに言及されます。

例えば、AとBの二人がホールケーキを食べる場合、二人で分けて食べても、どちらか一人だけで食べても、ケーキが残らずなくなればパレートに最適となります。
二人で同じだけ食べてもすべて食べきれずに残してしまえば、パレート最適ではありません。

前述した囚人のジレンマでは、互いに自白して懲役6年になるのが最適な選択であり、ナッシュ均衡であると解説しました。しかし、パレート最適で考えれば互いに黙秘をすることで懲役3年になるのが最適な選択です。

このように、ナッシュ均衡は必ずしも全体の利益を最大化するものではありません。

 

ナッシュ均衡・ゲーム理論の理解におすすめの本

ここでナッシュ均衡やゲーム理論をより深く理解するうえで役に立つ本を3冊紹介します。

ゲーム理論ワークブック

ゲーム理論ワークブックは、2015年12月に有斐閣から発売されたゲーム理論の基本から応用までを網羅したワークブックです。
著者は、岡田章氏、加茂知幸氏、三上和彦氏、宮川敏治氏の4人で、ゲーム理論の要点整理、理解度チェック、演習問題、練習問題と進めていくことでゲーム理論を身につけられます。

※出典:有斐閣|ゲーム理論ワークブック

ゲーム理論トレーニング

ゲーム理論トレーニングは、2003年3月にかんき出版から発売されたパズル形式でゲーム理論を理解できるトレーニングブックです。
著者はパズル本で定評のある逢沢明氏で、初心者でも読み進めていくうちにゲーム理論の基礎を理解できる入門書的な本といえるでしょう。

※出典:かんき出版|ゲーム理論トレーニング

経済学のためのゲーム理論入門

経済学のためのゲーム理論入門は、2020年10月に岩波書店から販売されたゲーム理論を経済学へ応用し、実践するための入門書です。
著者は、ロバート・ギボンズ氏(翻訳:福岡正夫氏・須田伸一氏)で、ゲーム理論の基礎から、産業組織論をはじめ国際貿易論、労働経済学、マクロ経済学などの応用例を紹介しています。

※岩波書店|経済学のためのゲーム理論入門

 

ナッシュ均衡の分析手法を企業戦略に役立てよう

ナッシュ均衡とはゲーム理論の一つであり、非協力を前提としたゲームにおいて、他のプレーヤーとの関係性のなかで全員が最適な戦略を取っている状態を指すものです。
ビジネスにおいては、開発や販売競争にナッシュ均衡の考え方を活かすことで最適な戦略立案のヒントとなります。

ナッシュ均衡では相手の立ち位置や状況をいかに読み取り、自分の戦略を明確にするかが求められますが、そのためには、まず自分の立ち位置を把握しなければなりません。
これはビジネスにおいても同様であり、重要となるのは経営戦略の明確化です。

自社のビジョンや方向性を明確にし、全社員で共有することで競合がひしめき合うなかで最適な戦略立案が可能になります。
戦略立案の策定には経営計画書の作成が重要です。

株式会社武蔵野では、経営戦略を明確にするための経営計画書の作成について無料お試しを実施していますので、ぜひご利用ください。

  • ナッシュ均衡とはどういうことか?

    ナッシュ均衡とは、非協力を前提としたゲームにおいて、他のプレーヤーとの関係性のなかで全員が最適な戦略を取っている状態を指すものです。
    この時ポイントとなるのは、すべてのプレーヤーが「均衡」を保っている点にあります。ナッシュ均衡においては、自分だけが戦略を変えても得をしません。両者で均衡を保っている状態がナッシュ均衡です。

  • ナッシュ均衡とパレート最適の違いは何ですか?

    ナッシュ均衡とパレート最適は、ゲーム理論や経済学などの分野で使用される概念ですが、それぞれ異なるコンセプトを指します。

    ナッシュ均衡は、ゲーム理論の概念で、プレイヤーが相手の行動を考慮した上で自分の行動を選択し、その後相手の行動が確定しているときに、自分の行動を変更しない戦略の組み合わせです。つまり、各プレイヤーが自分の戦略を変えると、そのプレイヤーの利得が最大化されない状態です。ナッシュ均衡は、相互に非協力的なゲームでよく用いられます。

    パレート最適は、社会的厚生や資源配分の観点から、与えられた状況で改善する余地がなくなるような状態を指します。つまり、ある状態がパレート最適であるということは、その状態からどれか一つの個体やグループの状態を改善することができる場合、その状態はパレート最適ではないとされます。パレート最適は、リソースの最適な利用や社会的効率性を評価する際に使われます。
    要するに、ナッシュ均衡はゲーム理論におけるプレイヤーの戦略的選択に関する概念であり、各プレイヤーが最適な戦略を取った場合に至る安定点を示します。一方、パレート最適は資源の最適な利用や社会的効率性に関する概念であり、ある状態が他の個人やグループの状態を改善する余地がないときに言及されます。

  • ジョン・ナッシュの均衡理論とは?

    ナッシュ均衡を提唱したのは、1928年にアメリカのウエストバージニア州で生まれ、ゲーム理論に多大な貢献をした数学者であるジョン・ナッシュ氏です。
    ジョン・ナッシュ氏は1950年にプリンストン大学で博士号を取得し、1994年には「非協力ゲームの理論における均衡の先駆的な分析」でノーベル経済学賞を受賞しています。

執筆者情報

執筆者の写真

佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役

1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。

経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。

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