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武蔵野コラム

更新日:2022/09/27 09:30

経営

資金繰り

コストリーダーシップ戦略とは?意味やメリット・発揮する方法や事例を紹介

読了まで約4分

コストリーダーシップ戦略とは、企業が市場で競合に対して優位性を得るための戦略で、競合よりも原価を抑え、低コストで製品の製造販売を実現させるものです。
単純に価格を抑えて多売をするのではなく、原価を抑えることで、低価格を実現するもしくは競合と価格を合わせて利益を向上させる戦略を指します。

本記事では、競合優位性を得るうえで欠かせない戦略の一つ、コストリーダーシップ戦略の概要、差別化や集中戦略との違い、主なメリットやデメリットなどについて解説します。
競合他社から抜け出すための戦略策定を検討している方は、ぜひ、参考にしてください。

コストリーダーシップ戦略とは

コストリーダーシップ戦略は、1980年に経済学者でハーバード大学教授でもあったマイケル・ポーター氏が提唱したものです。
すでに40年以上が経過しているにも関わらず、現在でも多くの企業が活用しています。

ここでは、コストリーダーシップ戦略の概要、長きに渡って活用され続けている理由について解説します。

コストリーダーシップ戦略の意味

コストリーダーシップ戦略とは、原価を抑えることで販売価格を安く設定するもしくは価格を変えずに高い利益を取り、競合に対し優位性を得る戦略です。

価格による戦略というと、薄利多売を思い浮かべるかもしれません。
しかし、コストリーダーシップ戦略は、単純な安売りではなく、安く販売するためにいかに原価を抑えるかに注力する戦略です。
そのため、利益も確実に取れ、競合に対する優位性の確保が可能になります。

コストリーダーシップ戦略が発展した背景

登場から40年以上が過ぎてもコストリーダーシップ戦略が多くの企業で支持される最大の理由は、市場の変化にあります。

マイケル・ポーター氏がコストリーダーシップ戦略を提唱した1980年以前の主な経営戦略といえば、市場をできるだけ拡大させ、そこから大きなシェアを奪うというものでした。

市場を拡大させるのにもっとも効果的な戦略といえば値下げです。
そこで多くの企業は値下げ戦略により、市場を拡大させ、いかにシェアを奪うかに注力していました。

しかし、1980年代に入り、多くの業種で市場が成熟し始め、値下げ戦略での市場拡大が難しくなったのです。
そこで、マイケル・ポーター氏は、競合を下すことを目的とするのではなく、顧客に新たな価値を提示し、収益を上げることが重要であると提唱しました。

コストリーダーシップ戦略もその一つであり、値下げだけに頼らない戦略が多くの企業に支持され、現代でも活用され続けているのです。

 

マイケル・ポーター氏が提唱したその他の戦略との違い


マイケル・ポーター氏が提唱した3つの基本戦略のうちの1つにコストリーダーシップがありますが、そのほかの2つとして、「差別化戦略」と「集中戦略」が挙げられます。
ここでは、これら2つの戦略とコストリーダーシップ戦略との違いについて解説します。

差別化戦略との違い

差別化戦略とは、高価格や高品質など製品やサービスに付加価値をつけることで競合との差別化を図る戦略です。
コストリーダーシップ戦略が価格の安さに重きをおいた戦略なのに対し、差別化戦略は製品の質、デザイン、ブランドなどに重きをおいた戦略といえます。

専門店でのみ販売する高級ブランド品、1日1組の予約客しか入れない高級飲食店などが差別化戦略の代表的な例です。
価格の安さに価値をおく顧客に対して、差別化戦略を行っても成功する可能性は低いでしょう。
そうした意味では、コストリーダーシップ戦略と差別化戦略は、相反する戦略といえます。

ただし、多品目を扱う店舗で、ターゲットによって低額商品と高額商品を使い分ければ、同じ企業が2つの戦略を活用することも可能です。

集中戦略との違い

集中戦略とは、競合の少ない小さな市場に集中して製品、サービスを投入し、市場独占を狙う戦略です。
基本的に市場拡大を狙った戦略ではありません。

しかし、一頃のキャンプブームによって急激にキャンプ用のニッチな製品の需要が高まったように、何かのきっかけで一気に市場が拡大する可能性もあります。

コストリーダーシップ戦略が販売価格を抑え、競合との優位性を得るのに対し、集中戦略は、競合が少ない市場に集中して製品やサービスを投入する戦略です。

そのため、必ずしも販売価格を安くする必要はありません。
むしろ、マニアやニッチなものを求める顧客がターゲットとなるため、良いものであれば、高価格でも需要はあります。

 

コストリーダーシップ戦略を発揮させる要素


安売りではなく、コストを抑えることが大前提となるコストリーダーシップ戦略ですが、具体的にどのような方法でコストを抑えるのでしょうか。
ここでは、コストを抑えるために欠かせない4つの要素を解説します。

生産規模の拡大 (規模の経済の追及)

コストリーダーシップ戦略を発揮させる要素として重要なポイントの一つが、生産規模の拡大です。
たとえば、1つの製品を100個製造するのと1万個製造するのでは、1万個を製造したほうが資材調達コストを抑えられます。

原価を抑えられれば、一つの製品を製造するコスト低減が実現し、販売価格を下げて顧客に提供することも可能になり、競合に対して優位性を得られるのです。

ただし、最初の段階から生産規模を拡大させられるのは一部の大手企業に限られます。

中小企業の場合、「複数の製品製造に同じ資材を活用する」「海外も含め安く資材調達ができる取引先を探す」などの工夫が必要です。

品質・サービスを向上させる技術

大幅な生産規模拡大が難しい中小企業がコストリーダーシップ戦略を行うには、資材の効率的な活用や安く資材を調達できる取引先を探す以外にも品質・サービスを向上させる技術の獲得が必要です。

技能訓練やサービス研修などを徹底しつつ、限られた設備のなかで品質を向上させるアイデアを出せれば、コストを抑えつつ生産規模を拡大できる可能性が高まります。

情報の社内共有

コストリーダーシップ戦略を実施するには、情報の社内共有が欠かせません。
部署やチーム単体でしか情報が共有されない状態では、コストリーダーシップ戦略の実現は難しいでしょう。

また、経営層だけが情報を持っていても、現場にいる社員が理解していなければ失敗に終わる可能性が高いといえます。

企業全体としてのゴールを定め、目的を達成するまでの道筋となる情報は常に全社で共有する必要があります。

企業全体における業務効率化

コスト低減には、企業全体における業務効率化が不可欠です。
特に中小企業の場合、限られた人数のなかで、製造や販売を行っていく必要があるため、あらゆる部署、チームが連携してコスト低減を実行していく必要があります。

たとえば、MA(マーケティングオートメーションツール)や生産管理システム、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入による業務の効率化や自動化は必須です。

また、技術継承や遠隔地からの指示、質の高い訓練等を可能にするスマートグラスやどこにいてもオフィスと変わらぬ業務を可能にするメタバースなど、業種によっては、最先端技術の導入も検討します。

コストリーダーシップ戦略を発揮するには、必要な業務、不要な業務を正しく見極め、企業全体として効率化を進めていくことが重要です。

 

コストリーダーシップ戦略の主なメリット


コストリーダーシップ戦略を実行することで得られる主なメリットとして、価格競争優位性を構築できる、サービス・商品展開が容易になるといった2つが挙げられます。
そこで具体的な内容を解説します。

価格競争優位性を構築できる

一般的に史上最低価格で製品やサービスの提供を行い、それに競合も併せてきた場合、双方が耐え切れずに疲弊してしまうケースは少なくありません。

しかし、コストリーダーシップ戦略は、原価を抑えたうえでの低価格戦略です。
仮に競合が価格を下げて対抗してきても、しっかりと利益を確保しながら対抗できます。

もちろん、業種や競合の規模にもよりますが、価格競争において優位性を構築できるのは、コストリーダーシップ戦略のメリットといえるでしょう。

サービス・商品展開が容易になる

コストリーダーシップ戦略の実行でコストを抑えたサービス・商品提供が当たり前になれば、市場動向に合わせた商品の新開発、既存商品の改善などによる商品展開が容易になります。

たとえば、コンビニエンスストアは、洋菓子店にも引けを取らないスイーツや、スーパーマーケットよりも気軽に購入できる惣菜などを販売しています。

競合に比べ店舗数の多さや深夜でも営業している利点に加え、商品の種類を増やすことで、これまでは競合に向いていた顧客層を自社に向けさせることに成功しました。

 

コストリーダーシップ戦略の主なデメリット

さまざまなメリットを持つコストリーダーシップ戦略ですが、デメリットも少なからず存在します。
主なものとして、他社との価格競争に巻き込まれる可能性がある、実現するまでに時間とコストがかかるということが挙げられます。

他社との価格競争に巻き込まれる可能性がある

コストリーダーシップ戦略により、価格競争の優位性を構築できますが、競合がさらに低価格商品で対抗してくれば、価格競争に巻き込まれる可能性があります。

特に資金に余裕のある大手企業が低価格で対抗してきた場合は、原価のさらなる抑制、利益を減らしつつも競合に合わせ価格を下げないと顧客を奪われてしまうかもしれません。

利益を無視した低価格戦略は、多くの中小企業にとってリスクが高く、長期化すれば経営自体も危うくなってしまいます。

価格競争に巻き込まれる前に新商品を開発する、より低コストで商品の製造を行う方法を常に検討しておくなどの対策が必須です。

実現するまでに時間とコストが必要

コストリーダーシップ戦略のもう一つのデメリットは、実現するまでに時間とコストを要する点です。

生産規模の拡大や生産技術の向上など、一朝一夕で実現させられる戦略ではありません。
条件の合う取引先を見つけるのも容易ではないでしょう。

ただし、実行を焦ると取引先とのトラブル、技術向上ができていない状態での生産開始など、コストリーダーシップを発揮できないまま失敗に終わる可能性が高まります。

準備段階で時間とコストがかかることはしっかりと理解したうえで、最大限の準備ができるよう、計画を立てて進めていくことが重要です。

 

コストリーダーシップ戦略の事例


最後に、コストリーダーシップ戦略を実践し、成功している企業の事例を2つ紹介します。

事例1.大手ファーストフードレストランチェーン企業

ある大手ファーストフードレストランチェーン企業では、フランチャイズチェーンの強みを生かし、食材の調達、運輸、販売までをマニュアル化し効率化を進めています。

具体的には食材の調達を一括で行うことで、生産規模の拡大を実現し、低価格化を実現しました。

また、一時期は低価格競争に巻き込まれてしまい業績が悪化した経験から、コストリーダーシップ戦略以外の戦略も組み合わせています。

たとえば、季節ごとの限定品や中価格帯の商品も揃え、それぞれにターゲットを変えたメニュー構成を行うなどにより、顧客獲得を実現しました。

事例2.大手家具・インテリア小売業

ある大手家具・インテリア小売業では、通常、自社保有はしない物流機能も保有するビジネスモデルを構築し、運輸部門のコスト削減を実現しています。

また、商品構成も低価格帯から質、デザインを追求したもの、より上質なクオリティを求めたものなど、さまざまな顧客に対応するスタイルを提供しています。

これにより、コストリーダーシップ戦略に差別化戦略、集中戦略も組み合わせ、多くの顧客からの支持を集めることに成功しました。

 

コストリーダーシップ戦略の手法は中小企業でも活用できる


コストリーダーシップ戦略とは、コストを抑えることで低価格もしくは高い利益の確保を実現し、競合に対して優位性を得る戦略です。 

生産規模の拡大など大手企業でないと難しい要素も少なくありません。
しかし、企業全体で情報共有を進め、あらゆる工夫を重ねていくことで、中小企業であっても活用できる戦略といえます。

ポイントは自社の経営戦略のなかで、コストリーダーシップ戦略をどのように位置づけ実践していくかを明確にすることです。
そのために有効なのが、経営計画書の作成です。

長期的な経営方針やビジョンを決定する経営計画書を正しく作成することで、コストリーダーシップ戦略の企業内での位置づけも明確になります。

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