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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/12/19 13:15

経営

EVM(アーンドバリューマネジメント)とは?計測値や計算式などわかりやすく解説

読了まで約4分

アーンドバリューマネジメントの略称であるEVM。
プロジェクト進捗管理手法の一つで、工数をすべてコストとして換算して管理します。
スケジュール管理をすると同時にコスト管理も行えるため、常に予算範囲内でプロジェクトが進んでいるかの確認が可能です。

本記事では、プロジェクトの進捗管理でEVMを活用するメリットを確認した上で、EVMの活用によって算出できる数値、計算式などを解説します。
プロジェクトの進捗や予算の効率的な管理方法を検討している際は、ぜひ参考にしてください。

EVMとは

プロジェクトの進捗管理手法の一つEVMについて、その概要やコストマネジメントとの違いについて解説します。

EVMの意味

プロジェクトの進捗管理といえば、スケジュールの管理をするものといった理解が一般的です。
しかし、EVMではスケジュールの管理と同時に進捗状況に応じたコストの管理も行います。

EVMの歴史は古く、1962年にアメリカで行われたミニットマンミサイル開発計画に適用されたのが始まりです。
その後、1967年にアメリカ国防総省の調達規定の一部として、管理基準が設定されました。

そして1998年、米国規格協会が「ANSI/EIA 748-1998」として公開し、民間の活用が普及しました。
日本では、2003年にEVM活用型プロジェクトマネジメント導入ガイドラインが公開され、現在では多くの企業で活用されています。

EVMとコストマネジメントとの違い

コスト管理を行う手法の一つコストマネジメントは、予算に対してどれだけのコストがかかっているのかを見るためのものです。
例えば、1ヶ月で1,000万円の予算があるプロジェクトで900万円が使われた場合、コストマネジメントでは、まだ100万円の余裕があると見ます。

しかし、費やした予算だけではなく、その時点での進捗状況も併せて見るのがEVMです。
仮に100万円の余裕はあっても、プロジェクト自体は計画の70%しか進んでいないとすると、予算を単純計算で200万円もオーバーしていることになります。

コストマネジメントだけで見れば、プロジェクトは順調に進んでいるように見えるかもしれません。
しかし、EVMの活用により、実際にはスケジュールも予算も見直しが必要だとわかります。

 

EVMがプロジェクト管理に与えるメリット

プロジェクト管理にEVMを活用することで、得られる主なメリットは「コスト・スケジュール管理の効率化」「課題の早期発見・即時対応」です。それぞれについて簡単に解説します。

コストとスケジュール管理が効率的にできる

EVMを活用する最大のメリットは、進捗状況に応じてコスト管理ができる点です。
通常、スケジュールはスケジュールで、コストはコストで管理するため、すぐに状況判断をするのが困難な場合があります。

そのため、スケジュールは問題なく消化できているものの、予算が大幅にオーバーしていることに気づかず、失敗に終わってしまうケースも少なくありません。

EVMを活用すれば、スケジュールの進捗を管理しつつ、同時にコスト管理もできるため、効率的です。
また、予算オーバーやスケジュール遅延に気づけないなどのリスクも回避できます。

問題の早期発見・対応が可能

EVMの活用により、スケジュールとコスト管理を効率的に行え、現時点でのコストがすぐに把握できるため、すぐに予算の組み直しやスケジュール調整が可能です。

また、詳しくは後述しますが、EVMは複数の指標を用いて数値を算出します。
そのなかには、現状把握だけではなく、将来の数値予測ができるものもあるため、将来的な問題の早期発見、対応も可能です。

 

EVMは4つの計測値で構成されている

EVMを構成する計測値は「計画予算」「出来高」「実コスト」「完成時総予算」の4つです。
これらによって、プロジェクト開始時に予測した予算見積もりとプロジェクトが完成した際の成果を比較します。

常に将来予測も行っているため、現在の進捗状況だけではなく、課題の早期把握も可能です。
ここでは、それぞれの計測値を簡単に解説します。

PV(計画予算)

PV(Planned value)は日本語で計画予算や計画値と訳され、プロジェクトの計画段階で最初に設定する指標です。
プロジェクトを実行する際、ある時点までに完了するタスク、人件費や設備費といったコストを予測して設定します。

PVはEVMのベースラインとも言える指標であり、スケジュールの遅延やスケジュールに対する予算のかかり具合などを判断し把握できます。
したがって、PVの設定が甘いと全体の数値もずれてしまうため注意が必要です。

EV(出来高)

EV(Earned Value)は、日本語で出来高と訳され、ある時点までにおいて工程ごとにかかる予算を合計したものです。
PVのように予測ではなく、成果の実績や作業量を見るもので、プロジェクトの進捗を把握するために欠かせない指標と言えます。

例えば、10の工程からなるプロジェクトで工期はそれぞれ1ヶ月、予算1,000万円の場合、2か月経った時点で2つの工程を300万円の予算を使って完了したとします。
この場合のEVは、進捗率(10分の2)に当初の予算である1,000万円を掛けた200万円です。

AC(実コスト)

AC(Actual cost)は、日本語で実際にかかったコスト(実コスト)と訳され、ある時点までに実際にかかったコストを合計したものです。

ACを見る際は、PVと同時に確認する必要があります。
双方に差異がなければ計画どおり、差異があれば予定よりも予算がかかっていないもしくはオーバーしていることになります。

なお、EVとACの違いは、EVが予算ベースでの指標なのに対し、ACは実際にかかったコストベースである点です。

BAC(完成時総予算)

BAC(Budget At Completion)は、日本語で完成時総予算と訳され、プロジェクト計画段階にプロジェクトが完遂した際にかかる総予算を設定するものです。
EVを算出する際の予算は、BACとなります。

PV同様、プロジェクト計画段階で設定しますが、PVはある時点までの予算を設定するもので、BACはプロジェクト全体の予算を設定するものです。

 

EVMの指標で算出可能な4つの数値と計算式

EVMを構成する計測値を見たところで、4つの計測値を使って実際にプロジェクト管理をする際の進捗状況やコストを算出するための計算式を解説します。

なお、これらの数値は単純に算出するだけでは意味がありません。
総合的に分析し、結果から対応策を講じることが重要であることを理解した上で、それぞれの計算式を見ることが大切です。

SV(スケジュール差異)

SV(Schedule variance)は、日本語でスケジュール差異と訳され、ある時点までのスケジュールの進捗状況を見る際に使われます。
計算式は次のとおりです。

SV=EV-PV

結果がプラスの場合は、計画よりも早く進んでいて、マイナスになった場合は、計画に遅延が発生していることになります。

SVは定期的に算出し、差異がどの程度あるかを把握しておく必要があります。
もし、大幅に差異が出てしまった場合はスケジュール調整が必要です。
どの程度の差異で調整するかは事前にある程度、決めておきましょう。

CV(コスト差異)

CV(Cost Variance)は、日本語でコスト差異と訳され、ある時点までに実際に発生したコストと定量化された成果の差額から、コストの差異を見るために使われます。
計算式は次のとおりです。

CV=EV-AC

結果がプラスであれば、コストは予算内に収まっていることを示し、マイナスになった場合は、コストが予算をオーバーしていることになります。

CVもSV同様、定期的に算出することで、プロジェクトのコストパフォーマンスを把握できます。
マイナスの額が大きくなった場合には、予算の見直し、改善が必須です。

SPI(スケジュール効率指数)

SPI(Budget At Completion)は、日本語でスケジュール効率指数やスケジュール生産性指標と訳され、スケジュールが順調に進んでいるかを確認します。
計算式は次のとおりです。

SPI=EV÷PV

結果が1になれば、プロジェクトはスケジュールどおり、1より大きくなれば、計画よりも早く進んでいます。

しかし、1より小さい数字になった場合は、スケジュール遅延を起こしているため、早い段階でスケジュールの組み直し、調整が必要です。

CPI(コスト効率指数)

CPI(Cost performance index)は、日本語でコスト効率指数と訳され、現時点でのプロジェクトの進捗状況に対し、当初の計画と比較してどの程度のコストがかかっているかを見ます。
計算式は次のとおりです。

CPI=EV÷AC

結果が1になれば、プロジェクトは予算どおり、1より小さくなれば、かかったコストは計画の範囲に収まっています。

しかし、1より大きくなれば、予算以上にコストがかかっていることになるため、予算の見直し、改善が必須です。

ETC(残作業コスト予測)

ETC(Estimate to completion)は、日本語で、残作業コスト予測と訳され、現時点でまだ終わっていない作業にかかる予算を予測するために使います。
計算式は次のとおりです。

ETC=(BAC-EV)÷CPI

プロジェクトを進めていく途中、どの程度の予算が必要なのかを判断するために欠かせない指標です。
プロジェクトの責任者は常に数字を把握しておく必要があります。

EAC(完了時コスト予測)

EAC(Estimate at completion)は、日本語で完了時コスト予測と訳され、プロジェクトの途中段階で予測されるプロジェクトの総予算を予測するために使います。
計算式は次のとおりです。

EAC=AC+(BAC-EV)

なお、この計算式は、残りの作業が当初の計画どおりに進んでいくと予測した場合のものです。
プロジェクト途中段階での予測を基に算出する場合の計算式は次のようになります。

EAC=AC+(BAC-EV)÷CPI

そして、現段階で当初の予測よりもコストがオーバーし、なおかつスケジュールも遅延している状態のまま進んでいくと予測した場合の計算式は次のとおりです。

EAC=AC+(BAC-EV)÷(CPI×SPI)

それぞれの状況に応じ、もっとも適した計算方法で計算しましょう。

VAC(完了時コスト差異)

VAC(Variance at completion)は、日本語で、完了時コスト差異と訳され、プロジェクト完了までに必要な当初の総予算と現時点で算出した最終的な予算の差異を見るために使います。
計算式は次のとおりです。

VAC=BACーEAC

結果がプラスになれば、当初に計画した予算内でプロジェクトが完了する可能性が高く、マイナスになれば、予算オーバーになる可能性が高くなります。

マイナスが大きい場合は、できるだけ予算内に収められるよう、最終的な調整が必要です。

 

プロジェクト管理でEVMを活用できるツール

Lychee Redmine

「Lychee Redmine」は、EVMだけでなくリソースマネジメント、レポート等の機能によって多角的にプロジェクト管理を支援しております。ドラッグアンドドロップや右クリックなど、基本的な操作のみで扱えるため、初めての方でも簡単に操作できます。

Lychee Redmineの詳細はこちら


Time Krei

スケジュール・工数管理ができる「Time Krei」では、EVMを用いた進捗、コスト状況の確認が行えるため、コストパフォーマンスを一括で管理できます。
特別な知識がなくても、ボタンひとつでプロジェクトの管理者側が知りたい情報を可視化できるため、課題解決に有効です。
またプロジェクトメンバーの予定や実績の管理もできるため、適切な人員配置にも役立ちます。

Time Kreiの詳細はこちら


Clarizen

「Clarizen」は、スケジュールや進捗だけでなく、リソース・課題・コストを一元管理できるツールです。
機器の準備・アプリケーションのインストールが不要のクラウド型のシステムなので、どこからでもリアルタイムに作業の進捗具合を把握できます。

Clarizenの詳細はこちら


クラウドログ

「クラウドログ」は、管理者だけでなく従業員も使いやすいシンプルな工数管理ツールとして知られています。
パソコン・タブレット・スマートフォンなどからの簡単な操作で業務時間や工数を登録することができ、登録したデータをもとに自動で各種レポートやガントチャートが作成されます。

こちらもレポートをリアルタイムで可視化できるため、働き方改革実現のための課題発見にもつなげられます。

クラウドログの詳細はこちら


TeamSpirit

「TeamSpirit」は、勤怠管理・就業管理・工数管理・経費精算・電子稟議・社内SNS・レポート・ダッシュボードなど、働く人が毎日使う登録機能をひとつにまとめたサービスです。

働き方改革プラットフォームとしても利用でき、従業員の働き方を可視化することで、生産性の向上や内部統制の強化をサポートしてもらえます。

TeamSpiritの詳細はこちら

 

EVMの活用は適切なプロジェクト管理に最適

規模の大小にかかわらず、プロジェクト管理はスケジュールとコストを常に把握しておく必要があるため、担当者にとっては大きな負担となります。

EVMの活用は、スケジュールとコスト、双方の数字を併せて管理できるため、管理効率も高まり、担当者の負担軽減も可能です。

また、プロジェクトを計画的に進めていくには、スケジュールやコスト管理のほか、メンバーが最大限の力を発揮させるための環境整備も欠かせません。
そして、責任者となる人材は、自社の経営計画を把握し、適切に進めていくことも求められます。

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執筆者情報

執筆者の写真

佐藤 義昭 / 株式会社武蔵野 常務取締役

1971年、東京都生まれ。
1990年、武蔵野にアルバイトとして入社、ダスキン事業から新規事業まで経験。
2007年、経営サポート事業本部の本部長を経て2015年11月取締役に就任。
2021年、6月常務取締役に就任。

経営者向けに年間100回以上の講演実績があり、企業文化を強化する経営計画書作成法を伝授。
年に一度行われる社内経営計画書アセスメントの方針作りや、小山昇の実践経営塾の合宿では、経営者向けに経営計画書作成や短期計画作成を支援している。
おもな講演テーマに『経営計画書を作るには』、『手書きによる短期計画作成方法』などがある。

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