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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/11/06 15:00

経営

コングロマリット・ディスカウントとは?多角化経営のメリットなどわかりやすく解説

読了まで約3分

事業規模が大きくなると、企業は複数の子会社をもつグループ企業に成長するケースがあります。
主力事業とは別に新たな分野に進出し、新たな製品・サービスを投入したり、新たな市場を開拓したりと、多角化経営を進めていきます。

外部から事業を買収して子会社化した場合には、グループ企業といえども経営方針や企業文化が異なるため、企業体としての編成方法を考慮することが大切です。

このような複合企業の統治を考える上で知っておきたいのが「コングロマリット・ディスカウント」です。
コングロマリット・ディスカウントを理解することで、複合企業の運営における注意点や対処方法がわかるようになります。

本記事では、コングロマリット・ディスカウントの基礎知識や背景、特性などを解説します。

コングロマリット・ディスカウントとは

コングロマリット・ディスカウントとは、M&Aを積極的に行い多角経営で事業展開をしている複合企業が、それぞれの事業を単一で経営した場合と比較して、株価が下落する現象です。
意味や類語について詳しく解説します。

多角経営とは

そもそも多角経営とは、企業がひとつの業種に縛られず多種多様な分野へと展開していくことを指します。

近年では、新型コロナウイルスによる事業環境の変化や顧客ニーズの多様化といった背景もあり、新たな収益事業を立ち上げる多角化戦略を重視する傾向にあります。

多角経営を行う企業には、業績低迷により新たな分野へ進出するケースや、よりニーズのある分野に活動を広げていくケースなどがあります。
主力事業分野をもつ企業もいれば、特に主力事業分野をもたず、複数の事業を経営する企業もみられます。

その中の一つの戦略として、「コングロマリット型」が存在します。

コングロマリットの意味

コングロマリットとは、市場的にも技術的にも関連性の少ない事業を複数抱える複合企業のことです。
多角的な事業展開を行う複合企業の中でも、積極的にM&Aを繰り返している巨大グループ企業のことをコングロマリットと呼ぶのが一般的です。

コングロマリット(Conglomerate)という単語は「巻きつける」という意味を持つラテン語を語源としています。
英語の「Conglomerate」には「集合体、集塊状の」といった意味もあるのです。

コングロマリットを形成する主な目的は、経営リスクの分散を図ることです。
社会情勢によって特定の事業に大きな影響が出ても、他の事業運営が順調であれば経営への打撃を最小限に抑えることができます。
ほかにも、事業同士のコラボレーションによって、新事業創出を試みる場合もあります。

コングロマリット・プレミアムとの違い

コングロマリットのもたらす効果として「コングロマリット・プレミアム」というものがあります。

コングロマリット・プレミアムとは、M&Aによって取得した事業同士の相乗効果によって、市場からの評価が向上することです。新たに事業を取得すると、既存事業では実現できなかった市場の拡大や新たな知見を獲得でき、競争力が強化されます。
その結果として、売上の向上や顧客の囲い込み、経営資源の有効活用などが実現して、株価も上昇している状態です。つまり、コングロマリットのプラスの効果といえます。

反対に、コングロマリットによるマイナスの効果が「コングロマリット・ディスカウント」です。
コングロマリットによる事業間の相乗効果が発揮されず、企業価値が低下している状態です。
市場からの評価が低下し、株価も大きく下落してしまいます。

 

コングロマリット・ディスカウントの背景


コングロマリット・ディスカウントはどうして起こってしまうのでしょうか。
その背景や原因を解説します。

なぜコングロマリットな企業の株価算定が難しいのか?

市場評価が下がる原因として、コングロマリット企業は投資家にとって株価算定が難しいという点が挙げられます。

単一事業を展開する会社の株価算定は、特定の市場や技術を評価すればいいため、比較的容易といわれています。
一方、コングロマリット企業全体の評価は、単純な事業ごとの評価の合計にはならないため、算定が難しいのです。

そのため、コングロマリット企業が抱える各事業の単一評価よりも、グループ全体の株価が実力値を下回る可能性が高くなります。
複合企業は専業企業に比べて6~7%市場からの評価が低くなるという調査結果もあるのです。

なぜ企業はコングロマリットを必要とするのか?

株価が下落するというリスクがあるにも関わらず、企業はなぜコングロマリットを実行するのでしょうか。

大きな理由として、自社の既存事業と関連性のない分野に事業ドメインを拡張することで、経営リスクの分散が期待できることが挙げられます。
例えば、外食産業や旅行産業をメインに展開していた企業は、コロナ禍の外出自粛によって困難な状況に立たされました。
アフターコロナといわれる昨今においても、依然として市場の不確実性は高い状況にあります。
関連性の低い複数事業を持つことで、経営の安定化が期待できるのです。

また、日本全体のマーケットが中規模程度であり、売上拡大に限界があることも理由のひとつです。
海外進出が難しい企業だと、業種や業態によっては大幅な成長が望めないため、事業の多角化によって売上の拡大を目指す場合もあります。

 

コングロマリットのメリット


コングロマリットによって企業には複数のメリットがあります。
この章では、コングロマリットのメリットについて解説します。

経営リスクを分散できる

先ほども説明しましたが、リスク分散ができることがコングロマリットのいちばんのメリットです。
ひとつの事業に頼った経営を行っていると、消費者の需要や社会情勢の変化により経営が悪化した場合に、太刀打ちできない恐れがあります。

特に新型コロナウイルスの感染拡大のような、予想できない事態が起きた場合にはどうしようもありません。

多角経営をしていれば、ひとつの事業の売上が落ち込んだときも、他事業である程度の収益を確保することができます。

企業経営におけるコストを抑えられる

コングロマリットによってすでに実績を出している事業を取り込めば、自社内で一から事業を立ち上げるよりも、コストを抑えて新たな市場に参入できます。

先述の通り、事業の多角化によって経営リスクの分散が期待できますが、新規参入にはリスクもつきものです。
コングロマリットでは、すでに市場で一定の実績を出している事業をそのまま取り込めます。
リスクヘッジになるだけでなく、技術開発や販売ルート開拓といった事業コストも最低限に抑えることができるのです。

異業種の統合によるシナジー効果が生まれる可能性がある

関連性のない異業種や異業態の事業を掛け合わせることで、シナジー効果が期待できるというメリットもあります。
シナジー効果とは、単純な足し引きではなく相乗効果によって新たな結果が生まれることです。

コングロマリットによって新たな事業を取り込むと、これまで自社にはなかった知見やノウハウ、技術を取り入れられます。
また、既存事業に異なるサービスを組み合わせたり、これまでと異なる販売経路を獲得したりすることで、新たな商品やサービスが誕生するかもしれません。

特に、不確実性の高まるグローバル市場においては、新たな市場を開拓して事業価値を向上させることには大きな意義があります。

中長期的なビジョンを描きやすい

コングロマリットで得られるシナジー効果は、短期間で発生するものではありません。
全く新しい市場へと経営を展開させるため、長期間を見据えて事業の定着を図る必要があるのです。

そのため、コングロマリットを中心とした経営戦略は中長期的なビジョンを立てやすいともいえます。
例えば、中規模事業を子会社化してじっくりと育てるケースが代表例です。グループ内で事業をどのようなポジションにするのかを計画しながら、事業成長の道筋を立てることでシナジー効果を高められます。

 

コングロマリットのデメリット


多くのメリットがある一方、コングロマリットにはデメリットも存在します。
代表的な3つのデメリットを紹介します。

ステークホルダーからの評価が下がる可能性がある

先述でも触れた通り、コングロマリットによって複数の事業を抱えたために、投資家などのステークホルダーから評価が下がるケースがあります。

ステークホルダーからの信頼を獲得するには、経営実態が明確である必要があります。

しかし、関連性の低い事業が複数集まっているコングロマリット企業は経営体制が複雑化しがちで、外部から見ると企業構造や事業ポートフォリオがわかりづらい状態になります。
単一事業と比べて投資価値があるかどうかの判断が複雑になるため、投資家から敬遠される傾向があるのです。
株価の低下は経営においても障害となる可能性があります。

それぞれの企業の管理が難しい

コングロマリットによって複数の子会社によるグループを形成すると、統治が難しくなることもデメリットです。

コングロマリット企業に属する子会社は、市場面・業態面でも関連性が低くなります。
そのため、グループ企業であってもほぼ独立状態にあることがほとんどです。
全体の管理や監督が難しくなり、ひとつの企業として統制をとることが難しくなります。
結果として、適切な事業運営や不正行為の防止などが困難になる可能性も高まります。

投資コストがかかる

関連性の少ない新事業に一から投資することになるため、ノウハウや設備などの共有がほぼなく、分野が違うと新たな人員の確保も必要になります。
初期投資がかさむ上に、もしその新事業が失敗した場合には、既存事業に再活用しにくいという問題もあります。

 

全く異なる分野へ進出する際には、事前に十分リサーチを行い、リスクを想定した上で慎重に行いましょう。

 

コングロマリット企業の成功事例

最後に、コングロマリット戦略を実施して成功した企業の事例を紹介しましょう。

インターネット関連サービスを展開する企業の例

通販サイトやネットスーパーといったインターネット関連サービスを展開している某企業は、短期間でコングロマリットを実施しました。

主要事業であったECサイトに加えて、生命保険や損害保険といった保険事業、ネット銀行などの銀行事業のM&Aを積極的に実施しました。
その他にも、ECサイトを海外に向けてリリースするなど、グローバル展開を進めています。

その結果、わずか20年程度で日本を代表する巨大コングロマリット企業へと成長しました。

大手電機メーカーの例

日本を代表する家電メーカーでもコングロマリットを実施している企業があります。
創業事業である電子機器や通信機器の開発・販売事業に加えて、電力設備などエネルギー関連事業、医療機器の製造や販売など幅広い事業を統合しています。

その中でも、これまで注力してきた製造業に情報技術や制御技術を取り込んで、高いシナジー効果を発揮することに成功しました。
その結果、金融のデジタルソリューションやビッグデータ解析、ロボット工学を活用した物流の高度化といった新事業を次々創出しています。

 

コングロマリットはメリット・デメリットの理解が重要


コングロマリットを形成すると、経営リスクの分散や事業同士のシナジー効果で新たなビジネスが創出できるといったメリットが期待できます。
その一方で、経営実態が複雑化するため投資家からの評価が低下し、株価が下落するコングロマリット・ディスカウントが発生する可能性も高まります。

闇雲に複数の事業を統合するのではなく、中長期的な視点で経営戦略を立てることが重要です。

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