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MUSASHINO COLUMN

武蔵野コラム

更新日:2023/12/14 14:36

経営

事業ポートフォリオの最適化|作成メリットをわかりやすく説明

読了まで約1分

自社の事業戦略を策定する上で欠かせない資料が「事業ポートフォリオ」です。
事業ポートフォリオを作成すると、注力すべき事業・撤退すべき事業が可視化され、経営資源の最適化や事業成長の促進といった効果が期待できます。

今回は、事業ポートフォリオの重要性やメリット、具体的な作成方法について詳しく解説します。

事業ポートフォリオとは

事業ポートフォリオとは、企業が行っている事業を一覧化したものです。
そもそも、ポートフォリオとは「目録、一覧表」といった意味を持つ言葉で、そこから転じて企業の事業活動をまとめた一覧を「事業ポートフォリオ」と呼ぶようになりました。

事業ポートフォリオでは、各事業の内容や実績だけでなく、収益性や将来性、安全性などが可視化され、比較できるようになっています。
資源投入の最適化や経営判断に役立てられるだけでなく、M&Aを実施する上で各事業の強み・弱みを把握するためにも事業ポートフォリオが活用されます。

 

事業ポートフォリオの見直しが必要な背景とは

日本では事業の撤退・売却に対する抵抗感が強い傾向があり、事業ポートフォリオの再編が積極的に行われていないのが現状です。
しかし、デジタル技術やグローバル化によって経営環境が急激に変化する昨今のビジネスシーンで持続的な成長を実現するためには、限りある経営資源を将来性の高い事業に集中投下しなければなりません。

特に、不確実性の高い新規事業への投資を行う場合には、収益性の高い事業ポートフォリオへの転換を目指し、キャッシュフローの充実を図る必要があります。
そのため、定期的に事業ポートフォリオを見直して価値の高い事業を明らかにし、売却等による事業の切り出しを決断・実行することが重要なのです。

 

事業ポートフォリオを作成するメリット

事業ポートフォリオを作成するメリットとして、以下の3つがあげられます。

経営判断がスムーズになる

事業ポートフォリオを作成すると、自社の経営状況を俯瞰的に見ることができ、将来性の高い事業への投資や撤退・売却といった見極めがスムーズになります。

特に現代は、ITの革新やグローバル化による市場の変動だけでなく、世界的な経済ショックや自然災害、感染症の流行などによって、消費者の価値観や市場ニーズが急速に変化する時代です。
このような変化に柔軟に対応するためにも、自社の状況を総合的に把握してスピーディな経営判断ができる体制を整えることは重要事項といえるでしょう。

既存事業の危機を回避できる

自社事業を俯瞰し、客観的に評価できれば、経営危機を早期に察知して回避することも可能です。

例えば、利益は出ているものの、投入しているリソースに対して利益率が低い場合には、早い段階で撤退や売却の見極めをすべきです。
反対に、売上そのものは小さくても、安定した収益を出せているのであれば、継続の判断が妥当な場合もあるでしょう。

事業ポートフォリオを作成すると、成長性や安定性といったさまざまな視点から各事業を分析でき、経営危機の回避につながります。

財務体質を強化できる

事業ポートフォリオでは、各事業の売上高を一覧化できるため、財務状況を的確に把握できます。

前述した通り、現代は不確実性の高い時代といわれており、突然の経済ショックや社会情勢の変化によって、自社を取り巻く環境が急変する可能性があります。
このような変化に備えるためにも、日頃から財務体質の強化に努めることは、企業にとって重要性が高いといえるでしょう。

 

事業ポートフォリオの作り方

それでは、事業ポートフォリオは具体的にどのように作成すればいいのでしょうか。
ここでは、事業ポートフォリオの作り方を4ステップに分けて解説します。

1.PPMで現状把握をする

まずは、PPMというフレームワークを用いて、自社の現状把握を行います。

PPMは「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(Product Portfolio Management)の略語で、限りある経営資源を各事業へ適切に分配するための分析手法です。
「市場の成長性」を縦軸、「市場におけるシェア率」を横軸にして、事業を「花形」「問題児」「金のなる木」「負け犬」の4つに分類します。

花形

花形は、市場の成長性・シェア率がともに高い事業です。次第に市場の成長性が落ち着いてくると「金のなる木」に移行します。

市場の成長性が高いということは、高い売上が期待できる一方、競合が多いということです。
そのため、競合企業に負けないよう、集中して経営資源を投入すべき事業といえます。

問題児

問題児は、市場の成長性が高い一方、シェアが獲得できていない事業です。
事業継続の判断をする場合には、シェア率を高めて「花形」への移行を目指す努力が必要になります。

とはいえ、競争率の高い市場においてシェアを獲得するためには、他事業から得た利益を継続的に投入しなければなりません。
現状で多くの利益を得られていない事業への投資は利益回収できない危険性を伴うため、撤退の判断も視野に入れるべきでしょう。

金のなる木

市場の成長性は低いものの、高いシェア率を獲得できており、安定した利益を生み出せている事業が「金のなる木」に分類されます。
市場の成長が見込めないため、今より大きな利益を生み出すのは難しいものの、大きな資源投入なく利益率を高めることが可能です。

ここで得られた利益を「花形」や「問題児」に投入すると、リソース最適化による組織全体の成長が期待できます。

負け犬

負け犬は、市場の成長性・シェア率がともに低い事業です。
製品ライフサイクルでいうと、成熟期~衰退期にある事業が負け犬にあたります。

他企業が撤退の判断をし始めるため、追加投資すればシェア率向上につながる可能性はありますが、市場そのものが縮小傾向にある点に注意が必要です。
撤退の判断も視野に入れ、経営資源を他の事業に割いた方が無難でしょう。

2.CFT分析で事業ドメインを決める

自社の現状を把握できたら、CFTという分析手法を用いて経営資源を投入すべき事業を見極めます。

CFTとは「Customer(顧客)」「Function(機能)」「Technology(技術)」の頭文字をとったフレームワークです。
マーケティング学者のデレック・エイベルが提唱した手法で、この3つの要素から「誰に・何を・どうやって提供するのか」を検討し、事業ドメインとして設定します。

それでは、各要素について詳しく解説します。

Customer(顧客)

Customerでは、事業におけるターゲットを明確にします。
商品やサービスをどのような消費者に向けて販売するのか、自社製品でどのような層のニーズを満たせるのかを、年齢・性別・職業といった観点から分析し、ターゲット像を定めていきます。自社にとってふさわしい顧客を定める行程ともいえるでしょう。

Function(機能)

Functionでは、ターゲットに対してどのような事業価値を提供するのかを明らかにします。
自社の商品やサービスを利用することで、顧客がどのような利益を得られるか、どのような課題を解決できるかを分析する行程です。

市場において高いシェア率を獲得し、自社の優位性を確立するには、自社製品の狙いを明確にして、競合と差別化を図らなければなりません。
そのため、Functionでの定義は事業ドメインの決定において最重要とされています。

Technology(技術)

Technologyでは、提供する価値を実現するために、どのような技術を用いるのか明確にします。
ここでいう技術とは、研究や開発に必要な技術力だけでなく、独自の物流インフラや販売経路など「製品を提供するために必要な力」全般を含みます。

自社独自の強みを発揮しやすく、他社との差別化につながる要素です。

3.SWOT分析でコア・コンピタンスを明確にする

資源を投入すべき注力事業が決定したら、次は自社の強み=コア・コンピタンスを明確にします。
コア・コンピタンスとは、他社には真似できない、自社の核となる要素です。競争に打ち勝ち、市場での優位性を獲得するための源泉となります。

コア・コンピタンスの分析には、SWOTというフレームワークを用いるのが一般的です。
SWOTは「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の頭文字をとった名称で、自社を取り巻く外部環境・内部環境のそれぞれについて、プラス面・マイナス面を明らかにします。

マーケティングでの戦略策定や意思決定に使われることが多い手法ですが、事業状況を俯瞰して、課題の目標を明確にするためにも活用できます。

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4.ビジネスモデルを設定する

自社の強み・弱みが明確になったら、ビジネスモデルの設定に移ります。

その際、企業理念に基づいているかどうかの確認が大切です。
事業ポートフォリオは、単に利益追求するだけでなく、長期的な視点で見たときに、自社の理想とする姿に近付くためのものでもあります。
「企業のあり方」に一貫性が感じられないビジネスモデルでは、企業イメージの悪化や顧客離れにつながるかもしれません。

そのため、事業ポートフォリオが企業理念に沿っているかどうかは、必ず確認しましょう。

 

富士フィルムの事業ポートフォリオ例

事業ポートフォリオを大きく転換し、成功を収めた事例として、富士フイルムを紹介しましょう。

富士フイルムは写真フィルムの製造・販売をメイン事業として成長をしてきた企業ですが、カメラのデジタル化により市場が急速に衰退し、経営戦略の転換を迫られました。
経営陣は早期から投資すべき事業分野の検討に移ったといいます。
その結果、「ヘルスケア(医療系)」「マテリアルズ(材料系)」「ビジネスイノベーション(事務系)」「イメージング」の4分野で新たな事業ポートフォリオを構成するに至りました。

かつての主力であったイメージング事業の売上は13%まで縮小したものの、フィルム製造で培った技術を活かした事業で利益拡大に成功しています。

 

事業ポートフォリオを経営戦略に活かそう

企業を取り巻く経営環境が急激に変化する現代では、事業ポートフォリオを作成する重要性が増しています。
事業ポートフォリオによって自社の現状を俯瞰できるだけでなく、注力・撤退すべき事業の見極めが容易になり、スピーディな経営判断が可能になるのです。

また、事業ポートフォリオは既存の分析手法やフレームワークを使うと比較的簡単に作成できます。
今回紹介した内容を参考に、事業ポートフォリオの作成と定期的な見直しを実施しましょう。

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