「ノアインドアステージ」は、インドア(屋内)のテニススクールの経営のみで全国展開を目指しており、現在は関西に12校、関東に3校のスクールを開校し、札幌に提携校を1校開校している。
2007年12月から経営サポートパートナーに参加し、社を挙げて環境整備に取り組んだ結果、約1年半という短期間で著しい成長を遂げた企業として、他の経営サポートパートナーから一目置かれる存在となっている。今号は、体育会系企業と環境整備という相反するイメージを抱かせるこの会社が、いかにして、急成長を成し得たのかをレポートする。
「環境整備を始めた頃はみんな、ナニをさせるんや、という反応でしたよ」と快活に話す、大西雅之代表取締役社長。
「それが今では100点以下の事務所はひとつもありません。環境整備点検のたびに毎月、チェック項目のレベルもアップしていますから。僕から見ても、そんな細かいところまでチェックするか、というところまで見てますよ」と、社長も目を見張るほどの成長ぶりを見せる、ノアインドアステージの各事業所のスタッフ。その成長の裏にあったのは、まず徹底した「パクリ」の実践。
「武蔵野さんのいいところは、やり方を教えてくれるじゃないですか。最初から自分で考えると時間がかかりますけど、パクってそのまま取り入れてから改善するのが僕のやり方ですから。スタッフにもまず他社さんへ見学に行かせました。口で言っても解らないことも、自分の目で見れば早いですからね」という大西社長の言葉どおり、他社の良いところや環境整備の成績上位の事業所を見て真似ることで、スタッフが改善のコツを掴み、次第に意識が高まって行ったそうだ。
さらに、女性スタッフが本気で取り組み、細かい部分にまで女子力を発揮することで、環境整備の質が上がり、回を重ねるごとに「環境整備の仕組み」が進化することへと繋がって行く。また、大西社長を「そこまで見るかぁ」と言わしめるチェックの厳しさの核には、「いい加減な点検をしていては、逆に点数が上がらない」という気概さえ感じるという。
もうひとつ特徴的なのが、体育会系企業という点だ。
体育会系と聞くと、整理整頓は苦手な印象を抱くが、ここではまったくその逆だ。
無駄な物は置かれていないし、コートの隅々までピカピカの状態が保たれている。ナゼここまでできたのか? それは、各事業所が点数を「競う」という仕組みを作成したからだ。この仕組みが、体育会系スタッフの負けず嫌い魂に火をつけたようで、互いに良い方向へ刺激し合いながら、環境整備に取り組める要因となっている。
その結果、飛躍的に向上したのが、各事業所内のチームワークだ。始めは社員だけで実施していた環境整備が、現在ではアルバイトスタッフもが参加するように発展。全員が一緒に同じ時間を楽しく共有することで、コミュニケーションが良くなり、チームで同じ方向を向いて進めるようになった。
もちろん始めから全てがスムーズに進行したワケではない。
「最初は僕自身も環境整備と言われたって分かりませんでした。それで、他社さんへベンチマーキングに行っていろいろ見させていただいて、さぁこれからどうやって取り入れようと考えたときに、まずやるしかない、信じるしかないという思いでした。当時は反発する人間も居ましたが雑音は気にせず、社長がやると言ったらやるんや! と押し通しました。
実際4~5年前までは、離職率も高かったですよ。テニスのコーチって職人になりがちというか、テニスが好きだからコーチをしてるだけで、会社のことが好きというもんではなかった。それに対し、自分自身も人(スタッフ)を大切にしていなかったということに気がついたんです。これからは人を大切にすることが大事なんだということを認識して、まず自分の行動を変えるところから始めました。そうしたら、スタッフも会社の方を向き始めて。
武蔵野さんで環境整備をはじめ、組織としてのシステム作りなどいろいろなことを学んで、マネして、やっと普通の会社になってきたというところです。スタッフも環境整備を経験することで、人間として成長しているし、心も磨かれて社会人として視野が広く持てるようにと思いますね。同じ規模の他社さんと比べても、スタッフのお客様に対するサービスや考え方のレベルは上位だと思います。今後、ライバルに勝っていくには人材しかないですから」と語る大西社長。
管理本部部長の石井知明さんによれば、現在は離職率が下がり、団結力も高いという。それが、現場からの、大西社長のスタッフを思う気持ちに対する応えなのだ。
「環境整備は会社として最低限やらなければいけないものだと思いますね。今、不況のこの時代に環境整備をしていなかったら、ムダな物や要らない物が多くて余計にひどくなっていたんじゃないかと思うんですよ。環境整備をやっているから企業として頑張れると、他社さんとも話しているんです。
環境整備は仕組みなんですが、そこからまた次の仕組みを作り出せるようになっているところが効率的で楽ですね。きれいにしろと言ってもできない箇所が、点検項目に入れるだけできれいになるんですから。僕も毎月全事業所を点検で回ると項目に入れたら、それで仕組みになってしまう。点検に行けば各事業所の状態も把握できるという仕組みですよね。
今後はもっと情報の環境整備を進めていかないといけないと考えています。お客様の声など、本部へ集まってきた情報を、現場や経営へどのようにフォードバックさせるのか、その仕分けの方法やPDCAの回し方が課題なんですよ。小山さんにもよく言われるんです。現場の声をもっと聞きなさい、現場に種があると。僕もそこに答えが有ると思いますね。まだまだ道半ばですから、これからさらに環境整備を進めて、お客様によろこんでいただける、より良い会社の体制を作っていきたいですね」
鶴見校は2年前に開校した、当社としては初めての小規模スペースで展開する事業所です。社として環境整備を始めると同時期に開業したこともあり、素直に取り組むことができました。収納スペースも少ないですから環境整備を徹底するしかなかったし、迷ったら捨てるという考えでムダな物を無くしました。この点に関しては、全事業所の中でも一番だという自負があります。お客様からも他社と比べて、鶴見校が一番きれいで気持ちがいいとお声をいただいています。
僕は好きなテニスに時間を精一杯使えて仕事ができ、暮らせることに感謝しています。今後もこの環境を保っていけるように努力したいですね。理想は環境整備を地域へも拡げていけば地元の方やお客様に貢献できるようにすることです。市場は常に変化しているので、それに対して「良い事はまずやってみよう」という気持ちを大切に活動していきたいと思います。
当校は勤務時間がシフト制なので、全員で一緒に環境整備をすることが難しいのですが、ローテーション表とテリトリー表を工夫して全員が、毎日15分間きちんと環境整備を実施できるようにしました。手順やポイントをエリアごとに見える化して、初めての人でもスムーズに環境整備が始められるようになっています。
環境整備では、次々と気づくことが出てくるのですが、それをやらなければ、気づいていないのと同じなんだということにも気づきました。お客様に対しても、イロイロな気づきや気配りが出来るようになってきたと実感しています。
「僕が入社したのが1987年。コーチの資格を取り、お客様に満足していただけるようにさまざまな工夫を凝らした結果、生徒数は増えましたが、まだまだ自分の給料も出せないような状況で、ビジネスとして限界があるなと思いました。だから僕から屋根(インドア)を付けましょうと提案したんです。屋根があれば天候や季節の変化に左右されず、おもしろくなるんじゃないかなという考えがあったんです」このアイデアが、年20億円超を売り上げる、今日のノアインドアステージの躍進へと繋がることになる。
一部をインドアにしたことで、お客様からの評価が上がり収入も安定。これをきっかけに、テニススクールの方向性を基幹から考えた結果、導き出したのが「楽しめるテニス」という新しいタイプのテニススクール。冷暖房完備のコートで紫外線を気にせず、コーチの指導もやさしいという、従来のスポーツ指導とはまったく逆の発想で取り組んだのだ。
「お客様がテニスに求めるものはさまざまですが、ノアが大切にしたいのは、楽しく上達していただくことです。ノアのスクールで居心地の良さを感じていただければいいんです。テニスってネット越しにラリーしますよね。不思議なものでそこから何かが生まれるんです。知らない人同士でも仲間意識が生まれる。僕たちはそれを『ラリーコミュニケーション』と呼んでいます。不況下でも、お客様にノアを長く続けていただけるのは、この絆があるからです」
ノアインドアステージのノアは、旧約聖書のノアの箱舟から付けた社名。お客様もスタッフも一緒に、ノアインドアステージの船に乗って幸せに向けて航海して行こうという、大西社長の思いが込められている。
「正直、僕も会社がここまで成長するとは予想もしていなかった。しかし、実践経営塾や経営計画書作成の合宿へ参加して、他業種の経営者さん達と刺激し合いながら考え方や方法を学びながら、やっと企業としての形が整ってきたところです。
僕はテニスに20年以上お世話になっているので、今後はテニスのお助けマンになれればと思っているんです。プロを引退した人材の受け皿を作ったり、ジュニアの育成や協会に係ったりしていければと考えています。おそらく5年以内に、なんとかしてくれという声が全国から多く集まってくると思いますね。だからこそ、今から人材を育てて行かなければ。そのためにも、これからもスタッフとの信頼関係を築いていきたいですね。小山さんもガーンと怒りますけど、そこには愛情がある。信頼が無くて怒ったら、部下はすぐ離れてしまいますよ。そうならないように努力しながら、将来的にはテニスに関してオールマイティーに活動していきたいですね」
本社:兵庫県姫路市東山524
従業員:440名(正社員、契約社員、アルバイト含む)
資本金:5,000円
沿革:
1975年 姫路テニスクラブ開業
1990年 屋外コートの1部(3面)をインドアに改装
1994年 全面インドアに改装。ハードコートからカーペットコートに変更
1999年 社名をノアインドアステージ株式会社へ変更
2003年 関東進出。武蔵浦和校オープン
2005年 札幌提携校・ウイング札幌ウエスト校オープン
2009年 つかしん校オープン









