武蔵野主催の「エクセレントカンパニー"現実現場"に学ぶ」の第2弾・現地見学会が2008年11月19日に行われた。今回はユニークな朝礼で、プラス思考の明るい人材を育成し、他の遊技場とは一味違うサービスを提供する「オザキエンタープライズ」を取り上げたい。同社はアットホームな雰囲気と居心地のよさをでリピーターを増やしている。同社は東京・国分寺周辺に5店舗の遊技場を展開する。目指すのは"お客様に感動してもらえるサービス"。目標実現のためには、働くスタッフが"明るく活き活きするように"と06年6月から始めたのが「世界一幸せになる朝礼」だ(社外の人も参加可能で、延べ約1500人が体験)。
午前8時半。その朝礼は始まる。買っても負けても喜んで締めくくる「本気じゃんけん」や親指と人差し指でLの字(LOVEのL)を作り、笑顔で「ハッピー」と相手に呼びかける「ハッピー体操」、24時間以内の良かったことや新しい体験を話す「グッド&ニュー」、手を交互にくみ膝を付け合わせ、相手の目をじっと見詰めながら互いに一分間誉め合う「ストローク」などユニークな内容が続く。最後は全員で手をつなぎ、目を閉じて静かにプラス思考を高める「イメージング」で締めくくる。斎藤昌之執行役員は「基本は互いに認め合うということ。様々なプラスの思考と行動を促す内容が、自他ともに認め合うという社風とキャスト一人ひとりの成長につながっています」とその成果を話す。
プラス思考になったスタッフを積極的に活用し、他店にはないコミュニケーション型のサービスを実施している。スタッフがお客様に話しかけることを禁止している店が多い中、同社はその逆をいく。常連のお客様が来店するとお名前を呼び笑顔であいさつする。お誕生日を伺い、スタッフ全員がお祝いのメッセージカードを作り、ケーキと一緒に贈る。母の日にはカーネーション。「どれだけお客様を覚えられるかが勝負」と尾崎幸信社長。そんなアットホームな雰囲気が気に入り、20年間毎日、通ってくるおばあさんもいるという。
全体の売上はスロットマシーンの規制が07年9月から始まったため減少したが、お客様の数は安定して伸びている。
「お客様が求めているのは思いやりと温かさ、そしてご自身の居場所です。だからキャストは、心の中をプラスの要素でいっぱいにして自ら温かい心になる事が大事です」。このユニークな朝礼を考案した尾崎真澄副社長はこう話す。
尾崎副社長は30年以上前から心理学を学び続けているが、朝礼はその成果の集大成だ。人は脳で快と不快をキャッチするが、心が不快になると、快を受容できなくなる。だからプラスの快をいつでもキャッチできるように教育する。それが毎朝の朝礼なのだ。相手を誉めて自分も誉められる「ストローク」は、人を快でいっぱいにしてくれる。「人をプラスに受け入れられる人は、お客様のためにも自ら喜んで動いてくれる。それが弊社の強みです」。
尾崎副社長は実家が遊技場。子供の頃から店に接し、住み込みで働くスタッフの面倒を見るお母さんの姿を見て育った。この業界には36年のキャリアを持つ。「武蔵野の小山社長が『仕事の中に人生がある』と言われていますが、私はこの会社とともにあります。家族、地域、人権、、人材の育成、これらは会社にありここに私の人生が集約されています」。同社の理念は「癒しの経営」。尾崎副社長は1994年、その思いをまとめた絵本「いのちの本」を出版した。98年からは車内で人権活動を展開し、03年にはその成果を日本の企業として初めて国連人権小委員会(スイス・ジュネーブ)のメンバーに向けて発表した。
「絵本は、先代社長の思い、現社長の思い、農家の思い、いろんな価値観を込めて書きました。そこには弊社の文化が集約されています。そして、小山社長に出会う事で文化は継続しつつ、ファジーな部分をシャープにブラッシュアップし続けてます。弊社の強みをより明確にすることができ、その良さにスポットを当て改革出来るようなりました」。『両親を大切にする人はお客様も大切にする』というのが尾崎副社長の自論だ。スタッフと共に地域に根づき確実に歩む。そんな思いが伝わってくる。
環境整備で研修ルーム開設!
卓球台やルームランナー、ダンボール箱などが雑然と置かれ、倉庫のような状態だった部屋が環境整備により、昨年、釘調整の練習をする「研修ルーム」に生まれ変わった。
それまでは、釘調整の研修を外部委託していたが、この部屋ができたことで、年間の委託費の2400万円が浮いた。業務の合間を縫って担当者の技術のブラッシュアップに活用されているほか、技術習得を希望するスタッフの研修の場ともなっている。
オーナーの家は江戸時代から360年続く農家なので、物を大切にする文化がありました。事務所には壁面いっぱいに棚があり、物で溢れかえっていました。環境整備プログラムを始めてからは、点検のたびに社長の許可をもらい、捨てる作業を繰り返しました。06年の現地見学会の受け入れを機に、全社合計で不用品 200トンを廃棄。棚は撤去してホワイトボードを作り、見える化の場として活用しています。幹部実践塾には累計で40人以上が参加。社長と幹部の役割が明確になりました。他にも様々な研修に参加させて頂くことで、共通の言語、認識、道具を持ち、市場の変化に素早く対応できる体質が出来てきました。
環境整備をアルバイトにまで浸透させるのは大変でした。最初は「環境整備と掃除は何が違うの?」というスタッフも多かったのですが、続けるうちに店内は目に見えてきれいになっていき、いつしか「気持ちいいね」という言葉が出るようになりました。毎朝15分、遊技台を中心に徹底的に磨いています。話をしながら楽しくやっているので、コミュニケーションのアップにもつながっています。"楽しい"が続く原動力になっています。「市場にはお客様とライバルしかいない」。ライバルのサービスをパクる。釘の整備や接客も今まで以上にお客様に喜んでいただくという観点を大事にしています。

「我々が店舗展開しているのは東京の郊外。お客様もそこに住む人が多くなります。だから地域の人が入りやすいフレンドリーなお店づくりを心がけています」。世界一幸せになる朝礼を励行するのも、この方針が具体化するためのものだ。お客様をお名前で呼び。スタッフがお客様と話をする、記念日にはプレゼントをするなど他店にはないサービスでリピーターを増やしていく戦略だ。最前線のホールスタッフの接客サービスがその戦略の鍵を握る。
「人材は人財。社員の成長が利益につながると考えています。仕事を通じて人が成長できる現場を与えることが大切です」。お客様と直接接する大事な部分は社内でしっかりこなし、閉店後の店内清掃や給与計算など委託が可能なものはアウトソーシングし、管理費を抑えた。
余分な仕事を作りがちな管理部門も最低限に減らした。「07年の7月から武蔵野の環境整備定着プログラムを始めました。不要なものを捨て、人の配置が明確になると、管理部門にも無駄があることがわかり改善しました。管理費を減らしたおかげで、その分を営業に注力することができました」。
スロットマシンの規制が07年から始まり、ダイレクトに売上に響いた。そんな中で同社は早い時期にスロットマシンを減らし、一円パチンコ(低投資で長く遊べる)も導入した。結果、お客様数は増加している。「売上が落ちたということは、お客様がそれだけ遊びやすくなっている証拠です。売上の減少についてはそう考え、積極的に受け入れました。実際に直面すると揺らぎもありましたが、その時、私を精神面で支えてくれたのが小山社長でした」。小山社長のアドバイスは、『売上が落ちても、粗利益とお客様数を落とさなければ良い』というものだった。同社の粗利は売上の増減に左右されない安定したものになっている。
規制や景気後退など、パチンコ業界にとって厳しい時代となったが、この苦境を乗り切るため、これまでの「環境さえ整えれば育つ」という考え方から、武蔵野流の「ノルマを与えてチャレンジする」に変えた。「社長が決定して、社員は実践する。社員にとって働きやすくなったのではないかと思います」。同社はこのような経営方針の下に財務体質を良くして、次なる出店に備えている。条件が合う物件が見つかれば、09年には新店舗をオープンさせたいと積極策を打つ。
資本金 8000万円
従業員数 150人
オザキエンタープライズ株式会社の沿革
1971年 尾崎興行株式会社設立
1972年 新小平ボウルをオープンさせ創業開始
1979年 パチンコ新栄小平グランドオープン
1980年 パチンコ新栄国分寺グランドオープン
1989年 パーラー新栄久米川グランドオープン
1993年 パーラー新栄国分寺パートVグランドオープン
1991年 尾崎幸信氏が代表取締役に就任
2002年 羽村市に「オゼックリトルエンジェル」グランドオープン
